話としては形を変えて繰り返し言い尽くされているところであるが、少しばかり。
ケース分析資料として、「空の境界」を読んでいて、上巻あとがきのところで、ジャンル分けの話がどうもしっくり来ずに引っかかった。
何かを説明する際に、「これは**だよ」とあるジャンルを指定して説明すると話がショートカット出来、相互理解をしやすい。よって、細部の説明はもちろんするとしても、枕にはなんらかのカテゴリ分けをまず行ってから本題に入るというのが日常会話で普通にやりとりされている。
しかし、本屋の書棚やレコードショップ(CDショップ?)のカテゴリー分けのようなジャンル切りわけでは、すっきりと分けられず、あっちにもこっちにも分類できるよねという作品に良く出会う。また、商品のマーケティングやパッケージングの流れを見ていても、一度ジャンルを解体して再定義した方がスムーズにコミュニケーション出来るのではという仮説感覚が日に日に強まっている。
(細かい話になるが、昔からこういう話はあるが、意識して観察しているせいもあってか非常に目に付き、気になるようになってきている)
「空の境界」の出自
「空の境界」の場合、あとがきをまとめている笠井潔氏の文章は本の位置づけとこれまでの経緯の話から入り、導線を引っ張る形で伝奇というジャンルの話に持っていっている。この前置きを踏まえ、伝奇モノの新しい系譜として「南総里見八犬伝」から今に至る系譜を整理し、半村良あたりを経由したその先に本書はあるという整理をしている。つまり、ジャンルの議論にいきなり入っておらず、前提として、違うコンテクストの読み手がいるというのを見て取れる。
この整理法は文学史論としては間違ってないだろう。消費社会論に飛び、吉本隆明とガタリを経由し消費社会論をトレースしていく構成もしっくりくる。伝奇からミステリになぜトレンドが移ったかという説明も、異論は立てられるが、ひとつの説としては納得できる。
では、本書のファン層、読者層は上記の系譜やコンテクストを意識して作品に接しているだろうか?
ボリュームゾーンやそもそもこの作品に古くから接してきたコアの層は否と言えるだろう。経緯については、Wikipediaにコンパクトにまとまっているが、元々同人市場から出てきた作品であり、出版社に作品を持ち込んでデビューした、どこかの新人賞を獲って世の中に出てきたというものではない。自力で市場を形成し、後に広い流通を得るために出版社から再パッケージされて出てきた作品になる。
つまり、作品の世界観や現行の流通を考えると、伝奇小説という位置づけは分かる。しかし、ユーザーセグメントとしては、伝奇小説ファンというところにそもそも無い。市場の切り方自体が変わっていると捉えた方が、説明のつけやすい現象はたくさんある。また、同じようにあまりジャンルを考えないで話した方が早いものは他にもある。
分類論からマーケティングへ
本稿で扱いたいのはもちろん文学論でも分類論でもない。ジャンルという商品分類と配架の仕組みがユーザーニーズとズレて来ているのではないかという仮説に繋がっていく。
ニーズに対応するのに、取り組まなければならないのが棚割りと商品マスタデータ、あってもメタデータの調整くらいであれば話は簡単なところで止まる。しかし、きっちり売るためには、流通とパッケージング、更には商品企画にまで手を入れた方が良いというのになってくれば、話は段々重くなる。
消費スタイルが以前と変化しているような、この手の感触の作品に触れる機会は珍しくなくなっているが、たまたまそういうのが重なっているだけで定期的に繰り返されるちょっとした移行期という話なのか、それとも本式に潮目が変わろうとしているのかが気になるところである。
コンテンツが変わり、そのコンテンツを取り扱うメディアが変わる。あるいは逆にメディアが引っ張り形でコンテンツが変わる。どれくらいのところまで動きを想定しておけば良いのか。
◇
”ジャンルなんて関係ない。良い音楽かそうでないか、それだけ”
タブゾンビ (SOIL&"PIMP"SESSIONS)
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