「今、アーキテクチャーって定義出来ないですよね」「そうそう、出来ない。なので凄く面白い」。
非常に信頼を置いている業界ウォッチャーの方と話をしていて思わず盛り上がってしまったのがこの一言となる。ネットワークインフラからOSIの層を順に上がり、サービス層を細分化して見た上で末端デバイスとメディアを加えてもこの意見は変わらない。定義出来ないものは定義出来ない。スナップショットで整理は出来るが早晩違う形になるのも分かっている。
今、アーキテクチャー全体が動こうとしているので、確定したストーリーなり構造を指摘するのは難しい。説明のために分かりやすくしているのは別として断片的に「こうです」と言っている議論は隣接レイヤーを加えるとロジック破綻を起こしたりすることもある。
そのようなステージに産業が入ってきたということが、普通にコンセンサスとして議論の俎上に上がるようになってきた。決まってないなりに、どっちに進んでいるのかのベクトル感や個別局所に働いている力を洗い出してみるのが最近の作業の通例になっている。
この環境下、インフラとは何を指すのか。
インフラ・ストラクチャー
インフラの定義を敢えて引いてみる。まずは、IT用語辞典。
基盤、下部構造などの意味を持つ英単語。「インフラ」はその略。一般的には上下水道や道路などの社会基盤のこと。ITの世界では、何らかのシステムや事業を有効に機能させるために基盤として必要となる設備や制度などのこと。
外の何かが安定的に動かす土台になるもの、とでも言えばいいのか。
これだけだと寂しいのでWikipediaで少し深堀してみる。まず、メリット面。
一般に、インフラに該当する財は、市場による供給が著しく不足する可能性がある。そのため、インフラ整備には中央政府や地方自治体が参加し、公共事業として行われるものが多い。インフラは、市場によって供給されにくいが、一度、公共事業として整備された後は、社会資本として経済の供給力に多大な好影響を及ぼす。例えば、都市間高速道路を整備することで、交通コストが低下し、工場立地が容易になり、商圏が拡大することで、域内の経済活動は活性化する。
このあたりの公共財議論についても基本的なところは見た経験があるが、メリットの記述だけ見ていても良いのか悪いのかなんとも言えず取り扱いの難しさ感が出ている。市場経済に任さずに政府側が良く引き受けているのはこの辺の理由による。とはいえ、平たくまとめると、インフラを整備すると上モノが普及しやすいという話になる。
さて、反対側のデメリット面。
インフラは、物財であるため整備後に維持コストがかかる。経済成長著しい場合は、インフラの整備がその後の経済成長によって正当化されるが、経済成長停滞や人口増加停滞が発生すると、インフラ予算の割合に占める維持コストが増大し、新設が困難になる。また、維持コストが予算を上回ると、いくつかのインフラに対しては維持放棄をする結果になる。
日本語版を参照したためか、タイムリーな記述になっている。現時点、インフラ投資の試算は結構やりにくいところだろう。
ITのインフラ層とは何か
前フリが長くなってしまったが、取り上げたいのはSun藤井さんの「SaaSとGoogle Code」となる。とはいっても本文には直接触れない。引きたいのは、インフラ層とはそもそも何を指しているのかというお題の設定となる。
インフラ層という言葉を聞いて通信の人であればネットワーク系の話を思い浮かべるだろう。コンピューターシステムはその上に乗る物。良く分かる話。次に、エンタープライズ領域でしっかり仕事をされている方に聞くと若干ばらつきはあるだろうが、ミドルウェア以下の全てが該当するだろう。アプリケーションより上はプロジェクト的にも役割が分かれることがあり、環境要件の擦り合わせはミドルウェアとアプリの層の間で行われるのが良くある話となる。次に、ネットのサービス系の話に行くと、ブラウザで動くものが基本感覚となり、出てきてもちょっとしたスクリプトくらいになるという展開になる。アプリケーションのコアモジュールやライブラリはインフラ側に回されてしまう。
さて、これらの話が揃っておらず、人によってまちまちなことを言うのは単体では別に良いのだが、インフラの取り扱いや投資サイクル、需給バランスの調整の難しさ加減を考えると、ネットワークの普及と共にインフラの範囲が拡張する傾向が気になる。何かを預かり、土台になる基盤の範囲が広がり、なんとなく見なくても済むような感覚になってしまう土壌が育ちつつある。「あちら側」といった議論の典型だろう。
つまり、どこかで誰かがなんとなく提供してくれるからあまり考えずに使えばよいという流れが出てきている。
ただ乗り論
世の中では普通、誰かがなんとなく提供しているというものはない。例えば、ネットの情報はタダであるという意見があるがそんなことはない。参照出来る形になっているが、著作権放棄などが明示されていない限り、公示の情報という看做しはあるにせよ文字通りのフリーコンテンツとは本来は言えない。余剰部分で賄われているため無視されることが一般ではあるがコストはかかっている。もちろん、パクって良いものでもない。
インフラ層にしても似たようなところとなる、コモデティサーバーとオープンソースでという話も誰かがどこかで生み出してメンテナンスを行っているから成立しているものとなる。あるいは、見かけの支出は減っていてもそれ相応のコストとリスクを追加的に負っているという場合もある。安かろうで始めたサービスが、ユーザーが集まった結果インフラがついていかなくて破綻したサービスの事例は片手では足りない。
冒頭に産業アーキテクチャーが定まらなくなってきたという話から入ったが、狭く考えると通信ネットワーク、広く捉えるとミドルウェアあるいは標準開発環境のライブラリ以下など、どの範囲を意識するかは別として、インフラ層の内部も動き方や役割分担が変わってきている。”安定して”何かを載せる層とはにわかには言いがたい動きも混じっている。また、APIやサービス化、SOAといった議論がこの技術環境の変化を吸収出来ているかと言われたらそこまでは行けていない。実装レベルでは却って増えたかもしれないブラックボックスを如何に回避し、可能なところは品質保証を預けるかという判断は今も昔も変わらず行われている。
出来ればインフラを忘れたいという希望とは裏腹に、現実は数年からもしかしたら10年前後固まらないんじゃないかという意見がリアリティを増して感じられる。先に触れた各業界を知る方々と情報交換していても似たような結論に至る。もちろん、ある程度局所的な標準パッケージは出されることだろう。しかし、NGNとWeb2.0が一部で衝突しているように、レイヤー間の役割定義から変わりかねない時だと標準を支えている前提認識が変わってしまう。チップやOSの動きを見ているとエンドユーザーにはさして関係が無いのだろうが、事業者側にとってはややこしい環境になってきたのかもしれない。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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