先にもお知らせの通り、米国で草の根パブリックジャーナリズムを引っ張っているダン・ギルモア氏が来日に際し「日本のBloggerと是非コミュニケーションを取る場が欲しい」との趣旨で、時事通信の湯川鶴章氏やFPN主催で開催されたBlogger's meetingに参加してきた。会場メモの速報エントリについてはこちらを。
彼の見るジャーナリズムの行く末
終了後の懇親会で米国人の方と話をしていたテーマになるのだが、米国では政治過程では旧来のメディアと合わせて大事な存在にBlogがなりつつある。その中でもギルモア氏はリベラル寄りで象徴的旗頭的存在となっている。そんな彼がどのような価値観から日々行動しているのかは一つのケーススタディとしても、現実的に世の中がどっちに向かおうとしているかの例としても非常に興味深い。
終わってから一通り考えを深めていたが、彼のエッセンスはこの二文に集約されるのではないだろうか。
メインストリームのジャーナリズムは生き残って欲しい。
天下国家を論じることだけがメディアでありジャーナリズムではない。身の回りのことでもそれを大事と思う人がいるのであれば立派なジャーナリズムと言える。
前者は、既存のメディアかBlogか、どっちが勝つのかという対立構図で整理された議論とは立場が異なっている。補完関係になっていく、湯川氏が会場で「Long Tailのようなものかも」とコメントをされていたが、役割分担を進めていくという見方をしている。
この点はH-Yamaguchi.netでのコメントで上手く表現されている。
ジャーナリストの中には、既存マスメディアへの失望やあせりからか、必要以上に攻撃的になったり、その将来に危機感を煽ったりする人もいるように思う。別に湯川氏がそうだというのではないが、印象的な対比があった。既存マスメディアをさすことばとして、湯川氏が「legacy media」ということばをしばしばキーワードのように使っていたのに対し、ギルモア氏は一貫して「mainstream media」ということばを使っていた。この差は重要だと思う。「legacy」という言い方は「古臭い、本来淘汰されるべきものが残ってしまっている」というニュアンスをもっているように思うが、「mainstream」という言い方は、今後もマスメディアが社会に果たすべき役割は変わらない、という見方を反映している。
マスメディアが「mainstream」であることと、マスメディアでないブログのようなメディアが育つこととは、おそらく相容れないものではない。どちらもそれぞれの役割をもっている。もちろん、既存マスメディア企業にとっては、これまでのビジネスモデルに変革を迫られたりするだろうし、それによって企業経営や事業規模にも影響があるかもしれない。それは個々のジャーナリストにとってはそれなりの脅威かもしれない。しかしそのことを、メディアのあるべき姿の議論にからめてしまってはいけない。そんなところだろうか。
根っからのジャーナリスト、そういう印象を強く受けた。
草の根メディアで、記事内容の真偽、メディアとしての信頼を如何に担保するのかという問いに対しては法的リスクの問題もあり担保していないとの回答がされていた。韓国オーマイニュースを引き合いに出していたが、米国のルールだと、他人の書いたものに手を加えると法的な内容責任を負わなければならなくなるという。よって、個々人の倫理と責任に任せる形を採用していると。他国に転用する際にはローカライズされるポイントの一つなのだろう。
環境変化への対応
今何が起きているの?と問われたら、ブログか新聞か生き残るのはどっちだというよりは、どういう風に組合されていくのかというギルモア氏の穏やかな感覚に近い。また、おそらくは見ている未来像も近いところにあるだろう。とはいえ、広告出稿や出版物の販売数の経年変化を追っていると構造変化が起きているのもまた正しい。
結局のところ、全体像を理解するにはどういう補助線を引けば良いのか。
本イベントに参加された方ではないが、お仕事日誌(そして一日一麺)でのエントリを引きたい。
例えば「マスメディア」や「今の世界でもっとも優れた仕事をされている方々」は、なにか大きな変容、それも非連続的な変容に対してどうやって対応すればよいのかという点。もう1つは、そういう人たちに対して、別の世界観の中にいる人達は、どのようにそういう人達に相対していけばよいのか、という点。これらはいずれにしても、絶対的に有効な解、というか統一的な手法というのは存在しないのだろう。ただ、そこには個人の個別性を前提としたコミュニケーションスキルと、持っているものをいったん留保するなり、全部棚卸してしまうなりの潔さのようなものは、わりに高い確率で必要とされるのでは、と思う。
さまざまな業界内の人と情報の流れを見ていると、同じ世界観を持つもの同士が情報の流通圏になっていることがままある。話の分かるもの同士のやりとりが日常化し、慣れない境界部分では議論がすれ違い、越境しようとするものはいざこざに出くわす。
1時間足らずの話の中でわたしの印象に残ったのは二点。ひとつは話が進んでいくうちに、どうも会場内の1人1人のもつ「ジャーナリズム」のイメージがバラバラなようだ、と気づいた人が、「ちょっと待って、あなたの考えるジャーナリズムの定義ってなに?」と質問したこと。そう、ジャーナリズムの定義自体が、非常に曖昧なものなのだ。特に日本では、マスメディア=ジャーナリズムというイメージでとらわれてしまっている人が少なくないのではないかと思われる(今日の会場内にいた人はその傾向が最も少ない集団だろう)。
とひとつエピソードが挙げられているが、相手の持っている前提や言葉の定義を確認しながら話をしなければならない場面は境界/越境の場面では必要になる。
そして、構造変化により、全ての境目が曖昧になっている場合は、日常的なコミュニケーションでも相手の立ち位置を考慮して意識的にやり取りすることが割と普通に必要とされることになる。
意見交換の中身は当然として、意見交換の方法もまた大事になる。こんなとき、方法の時代を説いた松岡正剛氏のことを思い出す。
参加された方のリンク:
Jun Seita's Web「What is the definition of "Journalism"?」
H-Yamaguchi.net「「legacy」か「main stream」か」
kush's blog「Dan Gillmor氏来日イベント」
masahikosatoh.com「ダン・ギルモアさん」
ちょーちょーちょーいい感じ「ブログについて考える勉強会」
湯川鶴章のIT潮流「ダン・ギルモア氏を囲む会に参加して」
いい感じ「ダン・ギルモア氏 MeetUp」
誰も信じてくれない、本当にあった不思議な話「「米国の参加型ジャーナリズム=ダン・ギルモア氏を囲んで」に出席しました。」
ガ島通信「ブログジャーナリスト・ダンギルモア氏が講演」
秋元@サイボウズ研究所プログラマーBlog「ダン ギルモア氏出版記念講演 at Apple Store 銀座」
zokkonの日記「Dan Gillmor」
maonekoblog「ダン・ギルモア氏の講演を聴いてきました+万博と草の根メディア」
くりおね あくえりあむ「「ブログ 世界を変える個人メディア」の著者 ダン・ギルモア氏講演会に参加」
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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