最終更新時刻:2008年8月30日(土) 2時12分

-

ダン・ギルモア氏来日:草の根ジャーナリズムの未来

公開日時:
2005/09/27 13:06
著者:
渡辺聡

先にもお知らせの通り、米国で草の根パブリックジャーナリズムを引っ張っているダン・ギルモア氏が来日に際し「日本のBloggerと是非コミュニケーションを取る場が欲しい」との趣旨で、時事通信の湯川鶴章氏FPN主催で開催されたBlogger's meetingに参加してきた。会場メモの速報エントリについてはこちらを
 
 
彼の見るジャーナリズムの行く末

終了後の懇親会で米国人の方と話をしていたテーマになるのだが、米国では政治過程では旧来のメディアと合わせて大事な存在にBlogがなりつつある。その中でもギルモア氏はリベラル寄りで象徴的旗頭的存在となっている。そんな彼がどのような価値観から日々行動しているのかは一つのケーススタディとしても、現実的に世の中がどっちに向かおうとしているかの例としても非常に興味深い。

終わってから一通り考えを深めていたが、彼のエッセンスはこの二文に集約されるのではないだろうか。

メインストリームのジャーナリズムは生き残って欲しい。

天下国家を論じることだけがメディアでありジャーナリズムではない。身の回りのことでもそれを大事と思う人がいるのであれば立派なジャーナリズムと言える。

前者は、既存のメディアかBlogか、どっちが勝つのかという対立構図で整理された議論とは立場が異なっている。補完関係になっていく、湯川氏が会場で「Long Tailのようなものかも」とコメントをされていたが、役割分担を進めていくという見方をしている。

この点はH-Yamaguchi.netでのコメントで上手く表現されている。

ジャーナリストの中には、既存マスメディアへの失望やあせりからか、必要以上に攻撃的になったり、その将来に危機感を煽ったりする人もいるように思う。別に湯川氏がそうだというのではないが、印象的な対比があった。既存マスメディアをさすことばとして、湯川氏が「legacy media」ということばをしばしばキーワードのように使っていたのに対し、ギルモア氏は一貫して「mainstream media」ということばを使っていた。この差は重要だと思う。「legacy」という言い方は「古臭い、本来淘汰されるべきものが残ってしまっている」というニュアンスをもっているように思うが、「mainstream」という言い方は、今後もマスメディアが社会に果たすべき役割は変わらない、という見方を反映している。

マスメディアが「mainstream」であることと、マスメディアでないブログのようなメディアが育つこととは、おそらく相容れないものではない。どちらもそれぞれの役割をもっている。もちろん、既存マスメディア企業にとっては、これまでのビジネスモデルに変革を迫られたりするだろうし、それによって企業経営や事業規模にも影響があるかもしれない。それは個々のジャーナリストにとってはそれなりの脅威かもしれない。しかしそのことを、メディアのあるべき姿の議論にからめてしまってはいけない。そんなところだろうか。

根っからのジャーナリスト、そういう印象を強く受けた。

草の根メディアで、記事内容の真偽、メディアとしての信頼を如何に担保するのかという問いに対しては法的リスクの問題もあり担保していないとの回答がされていた。韓国オーマイニュースを引き合いに出していたが、米国のルールだと、他人の書いたものに手を加えると法的な内容責任を負わなければならなくなるという。よって、個々人の倫理と責任に任せる形を採用していると。他国に転用する際にはローカライズされるポイントの一つなのだろう。
 
 
環境変化への対応
 
今何が起きているの?と問われたら、ブログか新聞か生き残るのはどっちだというよりは、どういう風に組合されていくのかというギルモア氏の穏やかな感覚に近い。また、おそらくは見ている未来像も近いところにあるだろう。とはいえ、広告出稿や出版物の販売数の経年変化を追っていると構造変化が起きているのもまた正しい。

結局のところ、全体像を理解するにはどういう補助線を引けば良いのか。

本イベントに参加された方ではないが、お仕事日誌(そして一日一麺)でのエントリを引きたい。

例えば「マスメディア」や「今の世界でもっとも優れた仕事をされている方々」は、なにか大きな変容、それも非連続的な変容に対してどうやって対応すればよいのかという点。もう1つは、そういう人たちに対して、別の世界観の中にいる人達は、どのようにそういう人達に相対していけばよいのか、という点。これらはいずれにしても、絶対的に有効な解、というか統一的な手法というのは存在しないのだろう。ただ、そこには個人の個別性を前提としたコミュニケーションスキルと、持っているものをいったん留保するなり、全部棚卸してしまうなりの潔さのようなものは、わりに高い確率で必要とされるのでは、と思う。

さまざまな業界内の人と情報の流れを見ていると、同じ世界観を持つもの同士が情報の流通圏になっていることがままある。話の分かるもの同士のやりとりが日常化し、慣れない境界部分では議論がすれ違い、越境しようとするものはいざこざに出くわす。

kush's blogでイベント内の出来事として、

1時間足らずの話の中でわたしの印象に残ったのは二点。ひとつは話が進んでいくうちに、どうも会場内の1人1人のもつ「ジャーナリズム」のイメージがバラバラなようだ、と気づいた人が、「ちょっと待って、あなたの考えるジャーナリズムの定義ってなに?」と質問したこと。そう、ジャーナリズムの定義自体が、非常に曖昧なものなのだ。特に日本では、マスメディア=ジャーナリズムというイメージでとらわれてしまっている人が少なくないのではないかと思われる(今日の会場内にいた人はその傾向が最も少ない集団だろう)。

とひとつエピソードが挙げられているが、相手の持っている前提や言葉の定義を確認しながら話をしなければならない場面は境界/越境の場面では必要になる。

そして、構造変化により、全ての境目が曖昧になっている場合は、日常的なコミュニケーションでも相手の立ち位置を考慮して意識的にやり取りすることが割と普通に必要とされることになる。

意見交換の中身は当然として、意見交換の方法もまた大事になる。こんなとき、方法の時代を説いた松岡正剛氏のことを思い出す。

参加された方のリンク:
Jun Seita's Web「What is the definition of "Journalism"?
H-Yamaguchi.net「「legacy」か「main stream」か
kush's blog「Dan Gillmor氏来日イベント
masahikosatoh.com「ダン・ギルモアさん
ちょーちょーちょーいい感じ「ブログについて考える勉強会
湯川鶴章のIT潮流「ダン・ギルモア氏を囲む会に参加して
いい感じ「ダン・ギルモア氏 MeetUp
誰も信じてくれない、本当にあった不思議な話「「米国の参加型ジャーナリズム=ダン・ギルモア氏を囲んで」に出席しました。
ガ島通信「ブログジャーナリスト・ダンギルモア氏が講演
秋元@サイボウズ研究所プログラマーBlog「ダン ギルモア氏出版記念講演 at Apple Store 銀座
zokkonの日記「Dan Gillmor
maonekoblog「ダン・ギルモア氏の講演を聴いてきました+万博と草の根メディア
くりおね あくえりあむ「「ブログ 世界を変える個人メディア」の著者 ダン・ギルモア氏講演会に参加

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このブログについて

ブロガープロフィール

アーカイブ

カテゴリ

ブログネットワーク

アルファブロガー

佐々木俊尚 ジャーナリストの視点グーグルはストビューで「よそ者」化する
佐々木俊尚 ジャーナリストの視点
クロサカタツヤの情報通信インサイト北京オリンピック
クロサカタツヤの情報通信インサイト
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance新サービスをローンチしました
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
村上敬亮 情報産業の未来図コンテンツ市場14兆円の中身と行方
村上敬亮 情報産業の未来図
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」場所・空間を増幅!?「ロケーション・アンプ」
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」
鈴木健の天命反転生活日記パラレルワールドとしての電脳コイル
鈴木健の天命反転生活日記

読者ブロガー

なにわのITベンチャー社長BlogWEB2.0 じゃなくって PC0.5
なにわのITベンチャー社長Blog
インターネットの裏側を探しましょtaspoの必要性とタバコ屋でのコミュニケーション
インターネットの裏側を探しましょ
電子政府パブリックコメントの抜粋できるだけ検索せずに情報を集める(試してみます)
電子政府パブリックコメントの抜粋
木田わをんのパソコン武士道@Tovas for AppExchangeのセットアップを30分で完了
木田わをんのパソコン武士道
夢幻∞大のドリーミングメディア夢幻∞大のエントリーアクセスランキング(8/29編)
夢幻∞大のドリーミングメディア
ネットのニュース.logMacBook touchは、登場するのか?
ネットのニュース.log

企画特集

仮想化環境で求められるストレージの要件仮想化環境で求められるストレージの要件
それに応えるNetAppの実力とは?
DELLが掲げる「新・仮想化アセスメントサービス」DELLが掲げる「新・仮想化アセスメントサービス」
〜企業システムの仮想化環境の構築を支援〜

新着コメント

たばこによる経済効果よりも関連の損失額の方が何倍も大きいという試算があり......
taspoの必要性とタバコ屋でのコミュニケーション
投稿者:PowerYOGA
こういうのいいですね!ちなみにCNETブログのシステムは全然進化しないですね......
夢幻∞大のエントリーアクセスランキング(8/29編)
投稿者:尊仁
櫻吉さん、いつもお世話になっています。アクセス順に並んでくれるとありがた......
夢幻∞大のエントリーアクセスランキング(8/29編)
投稿者:mugendai
「アダムとイブが楽園を追放されたのは、神様の言いつけを破って禁断の実を食......
毎日新聞社内で何が起きているのか(下)
投稿者:keijizyou
きむこうさん、コメントありがとうございました。 > 「お客さんが絶対必要......
新しい開発手法:初期にユーザインターフェースを完璧に作れば、最高の要件定義になる 2
投稿者:生島勘富

ブログネットワークとは?

CNET Japan ブログネットワークは、元はCNET Japanの一読者であった読者ブロガーと、編集部の依頼により執筆されているアルファブロガーたちが、ブログを通じてオンタイムに批評や意見を発信する場である「オピニオンプレイス」、また、オピニオンを交換するブロガーたちが集うソサエティです。

広い視野と鋭い目を持ったブロガーたちが、今日のIT業界や製品に対するビジョンや見解について日々熱く語っています。

あなたもブログを書いてみませんか?

CNET Japanやその他サイトが提供するITニュースやコンテンツへの意見や分析、 ビジネスやテクノロジーに対するビジョンや見解について語っていただける方を 募集しています。ご応募はこちらから

ブログの投稿・管理

ブログの投稿はこちらから(※ブロガー専用)

ブログアワード2007開催決定!

今年最も活躍したブロガーを表彰します。詳細はこちらから

αマークって?

これは、CNET Japan 編集部の依頼に基づいて執筆されているCNET Japan アルファブロガーによるブログの印です。

Good!って?

CNET Japan ブログネットワーク内で拍手の代わりに使用する機能です。ブログを読んで、感激した・役に立ったなど、うれしいと思ったときにクリックしてください。多くGood!を獲得した記事は、より多くの人に読まれるように表示されます。

レビュー

[レビュー]高い信頼性を普通に使う地球に優しい電源ユニット--Antec EarthWattsシリーズ EA-650
“自作ユーザーは、電源ユニットに何を求めるのか?”出力なのか、安定性なのか、それとも機能性なのか?難し
今週の新製品総チェック:ノート、デスクトップ、UMPCまでPC秋モデルが続々
富士通、NEC、東芝などのPCメーカーから続々と新製品が登場した。ノートPC、デスクトップPCに加え、注目の
今週の新製品総チェック:薄さ13.9mmのサイバーショット登場!NEC「LaVie」はデザインモデルが
最薄部13.9mmのソニー「サイバーショット」、ニコンのGPS内蔵デジカメ「COOLPIX」など、機能性、デザイン性