昨日のオラクルに続き、SkypeとeBayを。こちらはあちこちのサイトを見ても評価も評価方法もかなりぶれています。例えば、CNETの記事だと「イーベイのスカイプ買収、アナリストの反応はさまざま」、「イーベイのスカイプ買収--ブロガーはこう見る」にアナリストとBloggerのコメントが良い感じでまとめられていますが、意見百出という状況です。
eBayの側から
本件がどういう意味を持つのかじっと考えていたのですが、おそらく、読んだ範囲で一番本質に近い指摘なのは御手洗さんの「競争のフェーズは完全にシフトした(eBayのSkype買収)」
まず思ったのは「通信・ネット企業間における競争の次元の変化」です。まずこれを見て考えを真剣に改めないといけないのは、通信企業の方々なのではないかと思いました。つまり、インフラそのものにはもはや付加価値を生み出す可能性がかなり限定されており、付加価値の源泉はもっと高いレイヤーに完全にシフトしつつある、ということです。
でしょう。
VoIPソフト、音声メッセンジャーの比較対照となるGoogle Talkも通信業への参入の布石というよりは通信サービスを再定義しなおすと捉えた方がしっくりきます。GoogleはIPレイヤー上のソフトウェアに資産と競争力を集中させており、他のレイヤーの資産はコモデティ化されていく(当然、スケールメリットなどは残るでしょうが)とのシナリオが描けます。
言い換えると、IPレイヤーのコントロール力の下に置かれていく、インフラを持っているから強いのではなく、キーになるインフラアプリケーション(この概念は一昔前のキラーアプリケーションとは若干異なる)を押さえているかいないかでインフラの生死が決まるというのが彼らの持っている世界観でしょう。
音声通話というアプリケーション自体が特別なものとして位置づけられるのではなく、もはや様々なコミュニケーション手段やネットワークアプリケーションの1つとしてしか存在出来なくなってしまったということです。
これはつまり、今後の通信サービスの競争優位性を決定付けるものは、上位アプリケーションでの総合力になってくる、ということなのではないかと感じています。ここ数年、そういう感覚をぼんやりとは持っていましたが、Skypeが通信会社にではなくeBayに買収される、というところから、競争は新しいフェーズに入ったのだとより実感することが出来ました。
eBayは個人と中小企業を中心に中古取引・コマースの取引インフラとPaypalを利用しての決済サポートインフラを高いシェアで押さえており、これらのインフラを世界規模に拡張していくことを基本戦略として進めてきました。周辺ビジネス、財務構造を別とすれば方針はAmazonと似ています。
しかし、Skypeを買収した。これはつまり戦略転換の表明と解釈出来ます。通信業に参入しようとしている、音声コミュニケーションで本業のオークションを支援してシナジーを云々というのだけではなく、今後競争していくに当って必須になるユーザー接点を効率良く手に入れる施策との理解です。
また、同時にオークションのインフラサービス提供の会社という自社定義も変更していることでしょう。
投資家向けの発表資料(PDF)も最後まで目を通してみましたが、目に見える範囲の部分、表現しやすいシナジーまでしか踏み込んでないですね。自社のストラテジーをむやみと公開する必要はないですし、堅いところを表現する必要があるので、こんなところでしょう。核心部分はリスク情報でもあるし上手いこと隠しているという印象を受けます。
Skypeの側から
先日のSkype Conference 2005の際にも本人とやり取りして出した結論なのですが、アリエル/FPNの徳力さんは以下の通りコメントをしています。
もちろん、P2P技術を最大限活用したコストのかからないネットワークを武器に、売上高が無い状態でもサービス拡大はある程度できるわけですが、最近はサーバーで提供されている部分のボトルネックが明らかになりつつありったのも事実です。
例えば、今後スカイプの収益源を、他社が逆に無料で提供してきたらどうなるでしょうか?
現在、スカイプはボイスメールを利用者に有料で提供していますが、例えばGoogleならそもそも1GBのストレージを無料提供しているわけですし、Gmailと同様おそらくボイスメールも無料で提供することが可能です。
先のCNETエントリの「これらの業者と戦うにあたり、戦略オプションが自社の手の届かないところに行ってしまったらどうするのか」に該当する部分となります。
とはいえ、身売り先として他からも提案はあったのは幾つか報道されてます。なぜeBayからの提案を受け取ったのかは明確にされていません。伝え聞くところによるとGoogleとはいろんな意味で”合わなかった”らしいですが、ではなぜeBayという答えにはなっていません。
金額が十分に高かったというのはもちろんひとつ。カルチャーの近さもおそらくあったでしょう。しかし、Skypeの経営陣と過去の方針を見るに今頃チャネルの拡大とユーザーの獲得(相互乗り入れ)を理由への売却は不自然と言えます。技術的にも納得のいくなんらかのビジョンがeBayの側から示されて、納得して受け入れたと解釈するのが自然でしょう。今後競争環境がどう変わっていくか、自分たちはどっちに進むべきかで高いコンセンサスを得られたのではないでしょうか。
大手各社が共通して争っているのは、番号ではなく、IDを軸にしたコミュニケーションの窓口とユーザーの信頼、周辺に位置する情報サービスとアプリケーションサービス、更には実際のサービス。これらを括るアカウントサービスと理解出来ます。少し前のユーザーベースの多さ、ユーザーの囲い込みと多少意味は異なるのですが、どの程度の顧客基盤とサービスの厚みを揃えられているのかの二点がここしばらく強い競争軸になりつつある、その象徴的な買収案件と受け止めています。
◇
買収繋がりですが、本件はサンマイクロがストレージテックを買収したときの実体と周囲の評価とのギャップを思い起こさせます。卒業生など近しい人と意見交換して得られたものは、「Sunは一体何を高いお買い物をしているの?」という印象とは離れたものでした。最後は結果を見るしかないところですが、良い手を打ったのではと受け止めています。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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