最終更新時刻:2008年10月10日(金) 23時50分

12

より良い製品戦略を求めて:PRTM小野寺寛氏、山田政幸氏インタビュー(1)

公開日時:
2005/07/14 00:06
著者:
渡辺聡

こういうBlogを書いている関係上、『キャズム』や『イノベーションのジレンマ』、『オープンアーキテクチャー戦略』などのテクノロジーマーケティング、テクノロジーマネジメント関連に資料には割と目を通している。

クリステンセンの一連の著作でも重点的に取り上げられているが、技術の変化により産業構造ががらっと変わってしまうのがハイテク産業の特徴となる。ポーターが基礎を固めたリソース配分とポジショニングでは説明のしにくい現象は事例に事欠かない。

構造変化をどう捉えて対応するのかについて、万能包丁とは言わずとも良い整理の方法はないものか探しまわっていたところ、ET研で何度かご一緒させて頂いている山田政幸氏より、手前味噌にはなりますが技術戦略/製品戦略について面白いフレームがありますよということで『プロダクト・ストラテジー』をご紹介頂いた。

目を通してみると、アーキテクチャーへの言及は若干薄い気はするもののちょうど今自分が欲しいと思っていた考え方が整理されている。嬉しい出会いとなったので、「せっかくなので」ということで、背景も含めてPRTMのパートナーの小野寺寛氏にも合わせてインタビューさせて頂いた。PRTMのパートナー職と合わせて、早稲田大学先端科学・健康医療融合研究機構で客員助教授もされている。

 
 
そもそもの経緯
 
--まず、基本的なところからですが、産業界のどのようなニーズを感じて本書、もしくはベースとなるフレームワークは開発されたのでしょう?

PRTMの製品開発に関するフレームワークは、80年代に米国の開発が競争力を失っていた時に、他の国々の企業も含めて、世界的に競争優位に立っている企業の観察することによって形成されてきたものです。それが製品開発におけるビジネスマネジメント、プロジェクトマネジメントのフレームワークであり、本書で述べている製品戦略のプラットフォームです。Right productをright timing で市場に導入する(Do it right, do it fast)を実現するのが企業の競争力の源泉だと認識しています。それを解くためのフレームワークだと考えています。

--適用導入のインパクトはどのようなものが期待されますか?裏返すと、どのような企業に良くマッチするのでしょう?

基本的には、開発型の企業であれば、どのような産業にも適用可能なものです。このフレームワークを適用することによって、より良い製品を早く生み出すことが可能になると考えています。

--導入可能な産業分野(セクター)と、代表的な適用法を幾つか教えてください。

どんなフレームワークでもそうですが、フレームワークが問題のすべてを解決するわけではありません。問題解決をより容易にするための手段に過ぎません。従ってあらゆる産業、企業で、適用は異なってきています。ただし、成功するための核となるコンセプトは、共通ではないでしょうか。

--当初想定していなかった意外な応用事例があれば教えてください。

すぐれた企業は、優れたプラクティスをあらゆる領域に適用しています。製品開発のフレームワークで考えてきたものが、財務の資金調達の意思決定や、人事制度開発に使われたというようなケースもあります。
 
 
日本市場導入について

--シックスシグマを日本企業に導入している方のお話を伺ったことがあるのですが、やはり四半期を大事にする米国と日本ではやり方が違ったりとローカライズが発生している様子です。本フレームワークではローカライズや日本独自の使い方など出てきているものでしょうか?

前述したように、フレームワークを適用すれば、そのまま結果が出てくるというほど、経営は甘いものではありません。米国の企業であっても、フレームワークの適用は各企業の事情によってすべて異なります。ただ、米国の場合は、様々な価値観を持った人たち(宗教も違えば人種も違い、育った環境もまったく違う)をまとめて成果に結び付けていくために、共通の言語、共通のフレームワークを適用するニーズがもともと大きいという事情があるように思います。それに対して、日本では、暗黙知を暗黙知としたままであっても、問わず語らず各要員が全体のことを考えて最適化しようという風土があり、正しいことをやろうとして、結果として正しくなる、という可能性が比較的高いのではないでしょうか。従って、フレームワークを担ぐと、『何をいまさら当たり前のことを』という反応があり、そのような風土、文化に対処しなければならないという難しさがあります。

また一方、日本では、比較的優秀な人たちがどの層にも満遍なくいる、という構造を持っていますので、例えば、できる人たちだけを集めてプラットフォームを構築してそれを展開する、というアプローチの優位性は分かっていても、個々の開発で、より良いものと作ろうとして、結果としてそれができてしまう、という傾向があります。それが強さでもあるのですが、戦略的な製品開発ということでは弱さになるケースもあり得ます。

本書に紹介されているフレームワークについては山田政幸氏に簡単にサマライズ頂いたのだが、非常に長くなってしまったので改めて次回にとして前半のみで簡単にコメントを。
 
 
産業セクターにはそれぞれ癖があるというのは何を今さら指摘するまでもない話であるが、ハイテクはハイテクなりの特徴があり、戦略論にしても漸進的な産業の成長を暗黙の前提で持っているモデルはなかなかに使いにくい。競争のポイントが単に変わるのではなく、産業構造が変わり市場が完全に消えてしまったり、もしくは旧来の技術が一切使えなくなってしまうことが多々あるためとなる。

よって、資源ベースの戦略論(リソース・ベースド・ビュー)とリアルオプションの組み合わせのような見方の方が相性がよくなるのだが、あまり行き過ぎると今度は変にストラテジックなバイアスばかりかかってしまい小手先感が出てしまう。その会社の芯、アイデンティティを捉え難くなってしまうためである。

変わることを前提としつつ、変わらない蓄積を追いたい。単にブランドやビジョンなど上から引っ張るものではなく、もうちょっと低いレイヤーで技術に接点のあるところでその会社の軸を上手く整理する見方があると良い。おそらくプロダクト・ストラテジーが要望された背景も単体技術ではなく、もう少し広い範囲での技術評価も含めて行いたいという似たようなところが混じっているのではなかろうか。当事者の思いまでは分からないが当たらずとも遠からずではないかと思っている。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このブログについて

ブロガープロフィール

アーカイブ

カテゴリ

ブログネットワーク

アルファブロガー

外資系エグゼクティブの日々I am Jamming!
外資系エグゼクティブの日々
村上敬亮 情報産業の未来図ネットワーク型産業構造への衣替え?
村上敬亮 情報産業の未来図
クロサカタツヤの情報通信インサイトグッバイ、レバレッジ!(1)
クロサカタツヤの情報通信インサイト
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」9月イベントお知らせ
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」
ケータイ時代のスタンダードiPhonista Nightの事後報告
ケータイ時代のスタンダード
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance新サービスをローンチしました
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
鈴木健の天命反転生活日記パラレルワールドとしての電脳コイル
鈴木健の天命反転生活日記

読者ブロガー

IT業界(笑)最底辺層生活オトナになるということ
IT業界(笑)最底辺層生活
夢幻∞大のドリーミングメディア福祉国家の失敗〜40年前の「断絶の時代」を読む(3)
夢幻∞大のドリーミングメディア
Life with Mac and more.さあ来い!Silverlight 2
Life with Mac and more.
コミュニケンシュワ
コミュニケン

企画特集

ネットと家電をつなぐチャレンジ「Life-X」
第一題:ライフログ・シェアリングサービス「Life-X」の第一印象は?
エンタメCGM「gooメーカー☆メーカー」エンタメCGM「gooメーカー☆メーカー」
【第2回】メーカー/占いのコンテンツを作ってみた!

新着コメント

申し訳ありません、訂正をさせていただきます。 × 現在は既存メディアより......
東方なんとか、からSRCに辿り着く
投稿者:korly
行きたかったなー! 東京は、やはりー遠い!...
OSC2008Tokyo/Fallで勉強会大集合開催
投稿者:ヴィヴィ
アップルガイ=価値観のバイアス強すぎ!という印象バリバリでありましたが、......
PCがメインだって?だったらiPhone買ってみな!
投稿者:尊仁
ルート134さん、コメントありがとうございます。しかし、ノーベル賞を取得す......
ノーベル賞受賞者の嘆き〜40年前の「断絶の時代」を読む(2)
投稿者:mugendai
 物理学賞については、CP対象性の破れが、近年ほぼ実証されたので、受賞とい......
ノーベル賞受賞者の嘆き〜40年前の「断絶の時代」を読む(2)
投稿者:ルート134

ブログネットワークとは?

CNET Japan ブログネットワークは、元はCNET Japanの一読者であった読者ブロガーと、編集部の依頼により執筆されているアルファブロガーたちが、ブログを通じてオンタイムに批評や意見を発信する場である「オピニオンプレイス」、また、オピニオンを交換するブロガーたちが集うソサエティです。

広い視野と鋭い目を持ったブロガーたちが、今日のIT業界や製品に対するビジョンや見解について日々熱く語っています。

あなたもブログを書いてみませんか?

CNET Japanやその他サイトが提供するITニュースやコンテンツへの意見や分析、 ビジネスやテクノロジーに対するビジョンや見解について語っていただける方を 募集しています。ご応募はこちらから

ブログの投稿・管理

ブログの投稿はこちらから(※ブロガー専用)

ブログアワード2007開催決定!

今年最も活躍したブロガーを表彰します。詳細はこちらから

αマークって?

これは、CNET Japan 編集部の依頼に基づいて執筆されているCNET Japan アルファブロガーによるブログの印です。

Good!って?

CNET Japan ブログネットワーク内で拍手の代わりに使用する機能です。ブログを読んで、感激した・役に立ったなど、うれしいと思ったときにクリックしてください。多くGood!を獲得した記事は、より多くの人に読まれるように表示されます。

レビュー

今週の新製品総チェック:新PS3が登場!ニコンが発表した映像製品「UP」とは?
「東京ゲームショウ2008」が10月9日から開催され、新PS3やXboxの新作ゲームなど、ゲーム機の大型発表が相次
[レビュー]2011年画質を備えた高画質、多機能Blu-ray--ソニー「BDZ-X95」
ソニーのBlu-ray Discレコーダー新製品が登場した。2007年から引き継がれる「やりたいことから選ぶ」シリー
今週の新製品総チェック:よりモバイルPCとして進化した「Let's note」が登場
松下電器産業の「Let's note」、デルのデスクトップPCとPC新製品が数多く登場した。Let's noteは9時間駆動
今週の新製品総チェック:フルサイズCMOS搭載のキヤノン「EOS 5D Mark II」が登場
キヤノンからもフルサイズCMOSセンサを搭載した「EOS 5D Mark II」が登場した。合わせてコンパクトデジカメ
今週の新製品総チェック:第4世代iPod nano登場、ソニー「α」、松下「LUMIX」に新機種も