通信ネットワークインフラ、メディア環境に関する資料に目を通していると日米は基本的な構造が違うとつくづく思わされることが多い。例えば、米国でのケーブルテレビの普及、日本でのケータイの普及。こうした違いを押さえていないとニュース一本見るだけでもミスリードしそうになってしまう。
餅は餅屋ということで、米国で広告業を営んでおられ、本欄でも度々Ad Innovatorを取り上げさせていただいている織田浩一氏に日米のメディア、広告業界の違いについてお話を伺った。
--はじめに、経歴及び今なさっているお仕事についてお聞かせください。
もともとはアサツーと合併する前の第一企画の国際局で、20世紀フォックス、シャネル、ワーナーランバート、デュラセルなど欧米ブランドの日本でのマーケティング・広告戦略・企画を3年弱担当していました。その後、妻の実家に近いシアトルに移ることになりまして、6年ほどシアトルの日本語メディア会社で、印刷、TV、ネットの新しい媒体をいくつか立ち上げました。
その後、バブルの最高潮に独立し、ネットメディアに焦点をしぼったデジタルメディアストラテジーズを立ち上げ、すぐに、新しい広告手法であるブランデッドエンターテイメントのコンサルティングサービスをシアトルの会社と共同で、日本の広告代理店、オンラインエージェンシー、ウェブ制作会社に提供していましたが、今年始めから独自で提供する方向に変換し、それと同時にブログ、Ad Innovatorを立ち上げて、日経BPでのコラム「Webマーケティングの近未来」をはじめ、メルマガ「広告の近未来」もはじめました。
現在の業務は、主に日本の広告代理店、オンラインエージェンシー、調査会社に、欧米での新しい広告モデル・プロモーション手法のケーススタディ、業界トレンド、広告・メディア・IT新技術などの調査、コンサルティングをしています。これから、この分野でのセミナーや本の出版などを行っていきたいと思っています。
--Ad Innovatorを通じて何を見て行きたいのでしょうか。
広告の終わりです。 (笑)
というのは半分本当で半分冗談ですが、TVスポットなどの広告モデルはすでに崩れているので新しい広告モデルがたくさん生まれています。プロダクトプレースメント、ブランドインテグレーション、ブランデッドエンターテイメントなどは、「TiVo効果」(HDDレコーダーの代表TiVoなどを使ってCMが簡単に飛ばせることからこのような言葉が業界で使われている)に対抗するための方法として開発されたもので、果たして広告と呼べるものかどうかわかりません。
何しろユーザーは92%の広告を飛ばしているという調査もあり、今年の米TV広告全体の2%はこの影響を受けていると試算されています。これはTVの話ですが、オンラインではもっと速いサイクルでメディア接触環境の変化が起こっています。バナーの効果はどんどん低くなり、メールもスパムに邪魔されて効果を失い、あるいは若い層ではIMやブログの方が主でメールを使わないとか。検索広告もそのうち需要と供給のバランスが崩れて価格上昇が予測されています。
ちょっと、広告効果の下がる話ばかりしてしまいましたが、もちろんそんなことばかりではないわけで、ブログやRSS、SNSを始めとして面白いアプローチがたくさん出てきています。またTVスポットキラーとして名高いTiVoも、EPG(電子番組欄)を使った独自の広告手法を広告主に提供しています。
Ad Innovatorでは、このメディア接触環境が変わりつつある中で、広告主がどのように消費者にアプローチしていくか、どのような新しい可能性があるかを見ていきたい思っています。特に消費者がメディアを持って多数の人に対して情報を発信するという現象は、これまでなかったことですから、マーケティング、広告、PR、プロモーションのすべての概念が大きく変化する時だと思います。今日、Jones Sodaというアメリカの新しいスタイルの飲料メーカーのCEOと話をしていたのですが「ブランドは消費者のものである」と言ってそれを会社の行動基準にしています。コカコーラのCEOでも確かに同じことを公の場では言うでしょうが、実際にはブランドをコントロールする、という行動を取ってしまうのではないでしょうか。ブランドすら、このメディア環境の中では変わらなければならないことだと思います。
--米国と日本のメディアはいろいろと異なる点がありますが、簡単にまとめるとどこが違うと言えるでしょうか。
70年代、80年代にケーブルTVがほとんどの家庭に普及しましたから、TVの細分化という過程を既に通り過ぎていて、3大TVネットワークの視聴率の低下というのも、毎年のように言われていることとなっています。また、ケーブルのインフラがあるのでVODなどの新サービスも普及しやすい土壌があると思います。そこにハリウッドのコンテンツ制作能力があってインディペンデントもいて、という感じです。
それに対して日本はBS、CSとかはあるものの、まだまだTVの細分化をマスレベルで経験していないのではないでしょうか。携帯とブロードバンドがこの状況をどんどん変えつつありますので、これからメディアの細分化の波が押し寄せてくるのだと思います。また、アメリカでは子供が増えていく傾向があると思うんですが、日本では少子化の傾向があり、ということは子供向けのゲームも含めてメディアはこれから日本では苦労しないといけないという人口構成の違いもありますね。
あと、アメリカでブログ人口はネットユーザーの10%という数字を聞きました。つまり1300万人ということですね。もともと日本のようにメルマガを個人や小さな会社レベルで出すという文化が育っていないので、ブログがちょうどそこを埋めたのだと思います。
--メディアの構造の違いは、広告そのもの、広告業界に影響をどのような影響を与えていますか?
例えば、ケーブルチャンネルだと、地方ネットワーク局のCM枠とかを気にしなくてもいいですから、一広告主買い切りCM枠なし番組とかできたりします。またこれはメディアの違いというよりも、ビジネス環境の変化なのですが、90年代から広告代理店のグローバル化、合併などで、複数の代理店がメディアバイイング機能を一箇所に集め、代理店自体は広告戦略とクリエイティブに専念したり、Nikeの代理店として有名なWieden & Kennedyを始めクリエイティブサービスを主流とする代理店が出てきて、クライアントに対し価値の高いサービスを提供することで競争するようになったことが一つの違いかと思います。
つまり、媒体のコミッションにに頼るビジネスモデルからフィーベースに変わりつつあります。媒体に縛られなくてもいいわけですから、メディアの選択、メディアを新たにつくることに積極的になれるんです。まあ、この変化はまだまだゆっくりではありますが。
--日本と同じく、米国でもメディア接触の変化が起きているのを感じています。この変化は広告ビジネスにどのような影響を与えているのでしょう。
確実に変わっています。一昨年から去年にかけて18-34歳男のゴールデンタイムのTV視聴率が、確か6%ぐらい落ちたんですよ。この層は車、家電、スポーツ関連、アルコール飲料などでとても重要な層ですから、犯人探しが始まったのですが、広告業界の答えはゲームとインターネット。で、ゲーム内広告市場はこれから5年で4倍になることが予想されていますし、ここでの新しい広告配信テクノロジーも生まれつつあります。ネット広告については今年のAdvertising Weekで、広告代理店のトップマネジメントがやっとネット広告といい始めたということが大きな話題になっています。まあ、P&GやマクドナルドのトップがTVスポット偏重をやめるとあちこちでしゃべってますから、その意識にやっと追いついてきたのではないでしょうか。
--CGMは広告ビジネスにどのような影響を与えているのでしょう。
ちょうど、今ブッシュとケリーの大統領選の討論が終わったところですが、前夜、ブッシュ陣営では5000の保守派ブログにリアルタイムでライブフィードを送り、ケリーの論点に対するカウンターを行う、と発表しました。この大統領選は、はじめてブログで報道され、ブログでプロモーションが行われたものとして記憶させると思いますが、このように5000もの小さいけども熱狂的なファンがいるメディアネットワークが出来上がるという事実を我々は知らされたわけです。
また、ちょっと前にCBSの60ミニッツというニュース番組のブッシュの記録が偽造であるということが保守派のブロガーから証拠を突きつけられて、アンカーが謝罪するという事件があったばかりで、広告業界では同じようなことが広告やプレスリリースなどでも起こるのではないかとビクビクしています。
それから、小さい規模のケースですが、自社の製品についてブログやメッセージボードで語られている内容を分析し、競合とのポジションを考え、リアルタイムで広告メッセージを差し替えたソフトウェア会社のケースなどもあります。このあたりはますますキャンペーンのケーススタディがこれから出てくると思いますよ。
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まとめながら感じたのは、各カテゴリを専門として、存在感のあるBlogが最近目に付き始めているのではというところだった。米国のBlogは層が厚く、第一線で活躍する人々が日常的に情報発信を行っており、メディアが危機意識を持つほどになっている。日本では見られていない現象、という風に受け取っていたがそろそろ風向きが変わってきているのかもしれない。
織田さん、お忙しいなかありがとうございました。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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