前回に続いて、ネットワーク家電市場での映像分野の現状について。
松下、日立と伝統的に家電の強いメーカーに共通していたのは、ネットワーク機能がどうしても弱いというところだった、では、ネットワーク機能の実装に手馴れている、PCに強いメーカーはどのような状態にあるのだろうか。
「ネットワーク」家電
まずシャープ。液晶テレビが強いこと、PCは液晶を生かしたメビウスシリーズも根強いファンを持っており、両者の橋渡しを行う動機は少なからず持っていた。そこで出されたのがガリレオとなる。
ガリレオは、家庭内のデータとネットワークを統合管理する機器として定義される、いわゆるパーソナルサーバーである。ワイヤレスLAN環境を提供し、ウェブサーバーとして機能し、外部から自宅ネットワークにアクセスすることも可能となる。
映像機器としても、データ管理の要の位置づけとなっている。こちらの概要図にあるように
・テレビ、モバイル、PCから録画予約
・受信したコンテンツを蓄積
・テレビ、PCをモニターとして視聴
とアクセス端末は多様にしつつも統合管理出来る仕様となっている。
良く出来ている。が、前回見た松下と比較すると、AV機器としては弱い。オーディオ機器との接続、DVD品質の映像というメッセージは伝わってこない。開発秘話の冒頭にあるように、
インターネットにワイヤレスLANで接続できるルータ機能と、そしてテレビ放送やビデオ録画が楽しめるハードディスクレコーダー機能。それから、デスクトップパソコンやモバイルノート、PDAなどに、収められたデジタル情報をストックして管理できる外付けハードディスクと、3つの機能を持たせたサーバーを作ろうと。そうすれば、これ一台で、インターネットやテレビやビデオが楽しめて、しかもデータ管理もできる、そんな新しいデジタルライフの提案がしたかったんです。
PCの拡張、情報機器の結節点として作られてきていることが伺える。
もちろん、これは自社のラインナップにAV機器が含まれていないことから当然の流れではあるのだが、本格普及が始まった際、ビデオ、HDDレコーダー(加えるとしたらホームシアターやプラズマ/液晶テレビ)から入ってきたユーザーからすると、パソコン関連品であり、自分達には関係のない製品だと認識される可能性はある。
家電品も多数生産しているシャープだが、軸足は液晶技術と情報機器に太いものがあるのだと再確認出来るようなプロダクトがガリレオだと言えよう。
同じくホームサーバーとして機能を持ちつつもしつつも、音響機器としての気配りが行われているのがNECのAX300となる。先に書いておくと、ガリレオが持っていたルーターの機能は標準では持っていない。ガリレオはPCの世界の機器だが、対して、AX300はネットワーク機能強化をされたHDDレコーダーと理解するのが早い。
ガリレオとの違いをリストすると、
・DVDの再生録画
・ドルビー、5.1chなど音声出力
・3次元Y/C分離など映像処理
とオーディオビジュアル系の機能が加えられている。
ガリレオにしてもAX300にしても、ネットワークとコンテンツをどう押さえるかを意識して設計されているところが、家電量販店で大量に展示されているHDDレコーダーと決定的に違う点となっている。「全てはIPに乗って(2)」でまとめたようにコンテンツがデジタル化、IP化されていく流れをメインシナリオと考えるのであれば、ネットワークとコンテンツを同時に押さえていくことは必須となっていくことだろう。
ネットワーク家電:β
さて、大トリのソニー。PCの専業メーカーではないが、バイオの高いシェア、他社にないプレイステーションというゲーム機器、言うまでもない映像から音楽までの幅広い製品ポートフォリオを考えると、何かを出すポテンシャルを最も持っているメーカーと言える。
まずコクーン。基本はHDDレコーダーをきっちりと仕上げた製品であり、VAIOとの接続はおまけ的な扱いになる。地上波からスカパーまでの幅広いインプット、すご録にも搭載されているおまかせ録画機能などが押しであり、ビデオの世界から素直に進化してきたプロダクトだと言える。
PSX。入り口はコクーン+PS2というポジションとなり、コンテンツダウンロードはこれからの対応であることから基本はHDDレコーダーかつゲームマシンである。しかし、USBキーボード対応やMP3の取り込みが可能になるなど、PCの世界を繋げていこうというよりは、ネットワーク対応も含めて必要な機能は全て取り込んでしまい、むしろ、わざわざ出て行かなくとも済む製品に仕上げていこうという動きが見て取れる。既にソフトウェアアップグレードをネットワーク経由で行い、ネットワークゲームもPS2の頃から提供していることから、ソフトやコンテンツをダウンロードして利用する形態は決済とDRMさえ無事に越えれば順次提供していくことだろう。
ソニーはPCも持っているので、VAIOのデジタル家電対応を。VAIOのネットワーク対応は「VAIO Media」というVAIOを中心に据えたネットワーク接続の規格があり、VAIO同士、VAIOとテレビを接続してテレビ番組、音声、動画を自由に楽しめる環境を提供している。これまで紹介してきた機種で最も欠けていた、PC内のコンテンツをテレビ、オーディオから観ることを実現出来ている(正確には、テレビ、オーディオ側からVAIO内のコンテンツを呼び出すには別途「ルームリンク」がAV機器側に必要になる)。
すご録、コクーン、PSX、VAIOと並べて他社と比較すると、さすがソニーと言うべきだろう。取り組みの総合点はやはり高い。
総括
さて、一通り出回っている製品を見てきたが、前回提示した機能要件を振り返ると、テレビ録画も含めて映像、音楽、写真などコンテンツを統合管理することは次第に出来つつあるものの、PCからHDDレコーダー側への移動が出来ていない。ソニーの例のようにAV機器側に出力することは出来ても、例えば、貯めたコンテンツ全部に対してまとめてサーチをかけることは出来ない。また、HDDレコーダー側でのネットワークからのコンテンツのダウンロードもガリレオの「ネット de ビデオ」などぼちぼち試みは出来ているもの、まだまだニッチであり「ネットワークから落としたコンテンツをAV機器側で楽しむ」用事は十分にこなせていない。つまり、まだまだαもしくはβ版が世に出始めたくらいの段階が現状と言える。
※もっとも、最後の要件については、PC側でもまだまだこれからなので、いきなり家電の側に求めるのはバランスが悪い。世の中全体がこれからだと考えるのが普通である。DRMが十分に使えるところまで来ないことには、成立しない話だろう。
将来シナリオ
さて、アーキテクチャーがどうなるかだが、完全に一つになるのではなく、家電側から動いてきているPSXのタイプとPC側から動いてきているAX400のような機器と両方の系統が、やや前者有利の状況で共存していくのではないか。PCのネットワーク機能はあまねく普及するには少々複雑である。また、DVDに落とす処理をPCで行ったり、コンテンツ管理を統合的に行うためだけの機器としては、今のPCは多機能すぎる。同様に現在のAX400もネットワーク設定は少々ややこしい。ネットワーク管理機能はガリレオ並みに進化して欲しい。
いずれにせよ、INとOUTを一度一箇所で束ね、HDDレコーダーorコンテンツサーバーとして機能すると同時にネットワークの複雑性も上手く取り込める機器が中心にあるのが率の高いメインシナリオだろう。テレビ、オーディオは中心のレコーダーからのアウトプットを受ける出力系として機能し、リモコン、PCの類は管理画面への端末として機能する。この形にすると、テレビやPCなどモジュールに該当する部分は個別に入れ替えを行えるため頻繁に買い替えの起き得る携帯、PCが影響を受けて不便さを増すということもない。
実現タイミングは、コンテンツのデータ形式や管理の体系がある程度標準化が先んじる必要があることを考慮すると、順当に進んで2006年以降だろうか。技術的に成熟が進み、音楽、映画産業が納得し、放送業界とも足並みが揃うとなると、まだまだ調整すべき点は多い。落ち着いてメインストリーム市場に雪崩れ込んでくるのはもっと先だろう。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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