GoogleがGmailサービスを発表以来、プライバシー問題が大きな争点となっている。
基本的な枠組みとGoogleの事業全体にとっての意味は梅田さんがまとめているが、プライバシー問題としてGoogleに限らず、同種の問題は形を変えて出てくるだろう。良い先行事例となるため、具体的なレベルまでポイントを落としこんだ上で改めて争点を整理したい。技術的な可能性の検証は別稿として、まずはプライバシーを中心に。
世論の反応は分かれており、パブリックコメントにしても強硬なものになると、カリフォルニア州の議員が電子メールを内容を利用した広告を提供を禁止する法案を準備している例や(News.comの記事)、イギリス情報コミッショナー事務局の「Googleが電子メールをモニタリングして、その情報をマーケティングに利用することを、ユーザーがサービスに登録する際に十分説明している限り、法律違反にはならないだろう」との言葉を選んだコメントなど様々である。
一口にプライバシーといっても分野やケースにより考えるべき点は異なってくる。Tim O'ReillyがThe Fuss About Gmail and Privacy: Nine Reasons Why It's Bogusというエントリで上手く全体像を整理してまとめていたので、このエントリが基点となって新しく起きた議論と合わせて補助線として用いていきたい。
中身に入る前に、問題全体の位置づけの再確認から。
Googleに買収されたPyra(Bloggerと書いた方が話は早そうである)の創業者であるEvan Williamsの言葉を借りると
Any condescension in my tone was because of frustration at certain people and organizations who seem to be using the spotlight of Google for their own PR, while ultimately diminishing their cause (privacy), because they're misleading people instead of educating them.
注目を集めるトピックだけに誤解を招くような意見表明も出やすくなっている。Macromediaの非公式Blog、JD on MXでも
I'm wondering whether the main driver behind anti-Gmail activity might be, not just publicity, but classic PR shakedown... with the amount of mainstream awareness and an IPO, Google is a big target these days.
と、Googleへの是非とは別に、ポジショントークが混ざりやすくなっていることへの懸念が表明されている。トピックとして政治性が高くなっている状況なため今後資料に当たるときは気をつけてあたりたい。
回り道はこの程度として、O'Reillyのエントリを中心に争点整理を。
※O'Reilly自身は擁護派となるため、ニュートラルにするには、やや割り引いて読む必要がある。
1:「There are already hundreds of millions of users of hosted mail services at AOL, Hotmail, MSN, and Yahoo! These services routinely scan all mail for viruses and spam.」
まず、ホスティング型のメールサービスは既にいくつもある。また、何らかの意図を持ってスキャンすることは既にウイルスやスパムフィルタリングで行われている。一部のスパムフィルターソフトはメールの内容から類推してフィルタリングしており、その範囲はメールの本文にも及ぶ。書かれたものの内容をシステムがサーチすることそのものは決して世に初めて出てきたものではない(その意味では、まさに技術の問題ではなく個々人の感情の問題であり、社会問題が本質となる)。また、
Yes, Google could instruct a program to mine the stored email for confidential information. But so could Yahoo! or AOL or MSN today. (Perhaps people feel Google is to be feared because they seem to so good at what they do. But that seems rather an odd point of view.)
技術的にはGoogleのみが為しえるものではなく、各社フリーメールサービスへの付加広告を同じ原理で提供する事は可能である。Google固有の特殊事例ではなく、先行事例と捉えるのが正しい。
2:「the very act of sending an email message consists of having a number of programs on different machines read and store your mail.」
そもそもメールヘッダ情報の行き先を頼りに、パケットに分解されてネットワークの中を様々に流れていくことで無事に届くように出来ている。間にはルーターからたくさんのコンピューターを通ってきている。ストレージとルーターの処理内容が異なるため議論が一歩後退の感もするが、確かにそうはそうである。
3:「The amount of personal data already collected by credit agencies and direct marketers dwarfs what might be gleaned from email. 」
個人情報の読み取りと言うとクレジットカードの問題が先に来る。本人の事例を引く方が分かりやすいので引用すると
just recently, I was shopping in Bath, England, and made a large purchase in an antiquarian bookshop. Fifteen minutes later, I was four buildings down the street in a second bookshop, tried to make another purchase, and had my card rejected. Meanwhile, back in California, my wife was receiving a call, wondering if the card had been stolen. "Why would someone halfway around the world be spending so much on books?" they wanted to know. That's real time monitoring!
と、カード会社のシステムの出来が逆に分かるかのようなエピソードが紹介されている。Gmailの是非を問うのであれば、周辺の類似事例の是非も同時に問うのがフェアになる。クレジットカードの情報が広範に利用され、ウォッチされている事実に対してどのような態度を取るべきなのか。もう一つ、議論を呼んでいるイシューとしてがRFIDのトラッキングがある。
There are so many bigger issues to worry about, from RFID tagging to surveillance cameras on London street corners,
O'ReillyはRFIDの方をより問題視しているが、カードと同様にどのようなポジションを取ってバランスさせるのが良いのか。
5:「No one is going to be forced to use gmail. If you don't like ads in your mail, don't use the service. Let the market decide.」
Gmailを使う使わないは自由である。(それはそうだが、自由だからいいというのではないというのが議論になっているのも確か)
Danny's Raw Blogでは
6:「it doesn't matter where the data is physically located, but there's the I/O and the processing. Who has ownership (who runs) the algorithms that operate on your data?」
とデータに付随する処理について焦点を当てている。
That's out of the (Microsoft) pan into the (Google) fire, matey, by an order of half a dozen magnitudes. Don't words like centralization and monoculture mean anything here?
と、これまで矛先がマイクロソフトに向けられていたところから、Googleにシフトしたのでは、とコメントが実に的確。比較して、たとえローカルPCにデータがあったとしても、外から自由に中を覗いてスキャン出来たら問題化するだろう。Cookieを巡るたくさんの議論が先例になる。また、フリーメールを含めた各種ストレージサービスがこれまで問題とされなかったことも、このエントリのコメントで整理して位置づけられる。
利用者が感じる不安感をcold readingという概念を用いてNotes from Classy's Kitchenが表現している。
7:「The main problem is that ads in your email will look a lot more like cold reading. Imagine the kind of advertising you will get, when advertisers get an opportunity to target you right when you're at your most vulnerable. One can imagine the ads targeting death, debt, stress, love, insecurity. The list goes on.」
覗き見られるようなストレートな感覚の先には、監視され、誘導される感覚が待っている。やや仮説的な議論にはなるが。
〜〜
全ては押さえられていないですが、性急に結論を急がず、まず健全に議論をするための下地を作ってみました。明日まとめる技術的可能性の検討と合わせて、ご意見のある方はトラックバックを是非。
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