最終更新時刻:2008年8月30日(土) 2時12分

-

Amazonのサーチエンジン「A9」のβ版リリース

公開日時:
2004/04/15 12:34
著者:
渡辺聡

Amazon肝いりのプロジェクトとしてこれまであちこちで取り上げられていた独自サーチエンジン、A9のβ版がリリースされた。CNETでも早速記事になっている

米国のサーチエンジン動向ならここ、と言い切ってしまっても良いJohn Battelle's Searchblog速報エントリがされているので、簡単にチェックしてみたい。

まず前置きの後の総評は

On first blush it's a very, very good service, and an intriguing move by Amazon. It raises a clear question: How will Google - and more broadly, the entire search-driven world - react?

と良い評価を下している。詳しくは順を追ってまとめるが、さらっと使ってみた感触では確かにポジティブ評価をしたくなる新しさがある。

適当に単語を入れて走らせてみると、結果は三つに分かれて表示される。機能紹介に当たるWhat's New & Coolの力を借りつつまとめていくと、まず一番左に通常のウェブサーチの結果が表示されている。「provided by Google.」ということでサーチはGoogleを引っ張ってきている。ウェブ検索への参入は意図していないというコメントが出ていることから、この部分はGoogle以外になる可能性はありつつもエンジン自体はOEMのままで行くだろう。単体機能の優劣ではなく、真ん中の肝になる書籍、ショッピング検索と合わせて表示させることを意図していると考えられる。

次に、真ん中の部分。ここが中核機能となり、Search Inside the Bookも走っている。

In addition to web search results we present book results from Amazon.com that include Search Inside the Book. When you see an excerpt on any of the book results, click on the page number to see the actual page from that book. (You will need to be registered at Amazon.com.)

単語検索とSearch Inside the Bookが二つ同時に使われており、Search Inside the Bookで引っかかった場合はページ数の表記と単語の周辺20ワードくらいの内容抜粋も表示されている。「In addition to」と表現しているのは、書籍検索が提供機能としてはコアになるものの、ユーザーの利用視点ではウェブの検索がまず先にあることから、無いと使ってもらえないという判断だろうか。

一番右は検索履歴となる。登録とサインインが必要にはなるが、元々ECサイトなので特に壁とはならない。履歴を蓄積している範囲は

Search History: All your searches at A9.com are stored on our servers and shown to you at any time from any computer you use. Clicking on a link performs the search again. You can hide the window at any time and a password will be required to open it again. You can edit your history, for example, to hide an entry.

検索結果と、

Click History: If any of the web search results include a site that you have seen before, it's marked on the result. We even tell you the last time you visited that site.

クリックの結果。この二つはそのうち、Amazon本体が持っているレコメンデーションエンジンの一部として統合されて機能していくに違いない。

一つ面白いのは「URL Short Cuts」と名づけられた機能。ちょっとしたアイデアと言えばそうなのだが、「a9.com/任意の文字列」とURLに入力すると指定した文字列で検索出来る機能である。通常、検索のショートカットはツールバーにて実現されているが(そして、当然のごとくツールバーも提供しているが)、既に何か馴染みのツールバーを入れているというユーザーは多いことだろう。ブラウザ上部の空間シェアを争って割り込むのは大変である。であれば、ツールバーよりは多少不便にはなるが、URLからサーチを可能とするのは賢いやり方と言える。

A9のサービスの面白さは見た目そのままになってしまうのだが、ウェブのサーチと書籍のサーチを同時に出来てしまうことにある。ウェブのサーチは悪く書いてしまうと玉石の判定が難しく、断片的な情報を集めてしまいがちである。PageRankにせよ密度法にせよ個々の情報の信頼性は厳密には担保出来ない。しかし、思いもかけない情報が手に入ったり、現場の生の声などがぽんと書かれていることがあるのもウェブの良いところである。対して、書籍、特に本文中の情報はある程度人のチェックが入っているものであり、主義主張政治身上などの違いはあるにせよ、ある程度の品質保証はされた固い情報である。

どっち良いとかいうのではなく、二者は違うカテゴリーの情報なため、単純に上手く組み合わせて使うのが良い。ある程度オーソドックスでスタンダードな情報は書籍を中心に確認し、更には必要に応じて該当の書籍を購入する。この段階までで中心の大事なところを押さえてしまう。合わせてウェブサーチの結果で追加情報や周辺関連情報を得て深みや豊かさを得たり、新しい切り口を探したりする。などというメリハリの利いたサーチが行えることとなる。書籍内容への広範なアクセスが必要になるため、今のところAmazonしか十分な形では提供出来ないサービスモデルとなる。
 

  
さて、John Battelle's Searchblogに戻って。結構長いエントリなのだが、真ん中少々上でGoogleとのポジションの違いをまとめているところが面白い。

It seems to me, Google's position in Amazon's A9 implementation is at best a step backwards. If A9 is as good as it seems to be, every customer that uses and/or switches to A9 becomes an A9 search customer, and, more likely than not, a deeper and far more loyal Amazon customer. (The service incorporates a personal search history and many other really neat tweaks, including a wicked good Toolbar.)

まず、全てのフロントに立つというGoogleの初期イメージに対応してSearch Inside the Bookが始められたという劣勢のイメージから転じて、Googleの更にフロントに巧みに立っている。純粋にウェブサーチをしたいというユーザーはスイッチしないだろうが、濃い目の情報を得たいと思うユーザーはA9にシフトする可能性はある。特に、Amazonユーザーにとって、Amazonのサービスと巧みに統合されていった場合、単体のサーチエンジンサービスでは得られない体験が提供されることになる。つまり、GoogleはA9のサービス全体からするとモジュールとして機能していることになるが、この状態は競争なのか協業なのか。

In essence, Amazon seems to be making a play for Google's customers. Or it seems that way to me, anyway. Sure, Amazon isn't in the AdWords business. It's happy to outsource that to Google and focus on the entire US retail GDP instead...

Googleが自社のインターフェースとAdWordsの組み合わせを重視しているのであれば競合していると言えるが、AdWordsに固執するとしてもAmazon側での表示が可能であること、それ以前に、A9経由の収益をどのように分配するかで大部分は解決すると考えると協業的に捉えられる。協業というか、「Google's customers」と言い切っても良いところはある。
 
 
二社の関係を考えると今朝の梅田さんのエントリ、「Googleの独自技術はどこまで汎用的で競争力があるのか」の最後で再掲されていた

先日、シルバーレイク・パートナーズのRoger McNameeと話をしたときに、彼は、「GoogleにとってXXXは競争者ではないが、XXXにとってはGoogleが競争者(脅威)に見える、そういうXXXが業界にはたくさんいる。でも、Googleにとっての競争者(脅威)は厳密な意味で存在しない」という表現を使ってGoogleのユニークネスを説明していたが、まさにそういう感じなのである

という記述の重みが実感として捉えられる。自社のサイトでのPVとクエリ数を追求するサーチエンジン競争のイメージで捉えると、Googleの一番面白いところは見失ってしまいそうである。

A9については先のSearchblogの速報エントリでも何歩か突っ込んだ考察が展開されていたりするが、そのうち各所で反応が出てくるだろうことから、面白いのが出揃った時点で取り上げることとして、ひとまずここで筆を置きたい。

追記:
引っかかったエントリを中心にクリッピングしています。

・Sotto Voce Amazon's A9
・utahblog Amazonの検索エンジン
・エッセンシャル・サーチエンジン AmazonがA9のベータ版を開始

・John Battelle's Searchblog NEWS: A9, Amazon's Search Portal, Goes Live: Reverberations Felt in Valley
More on A9
・John Battelle's Searchblog Interview with A9's Manber up on B2.0
・John Battelle's Searchblog Search Engine Loyalty, A9 Prognostications...
・Business2.0 Can Amazon Unplug Google?
・ResourceShelf Web Search--a9
・[the] Jason Murphy Show Google gets Bamboozled - Amazon's Search Engine is Now Live!
・E M E R G I C . o r g Amazon's A9
・PaidContent.org A9, Amazon's Search Portal, Goes Live
・Joi Ito's Web A9

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このブログについて

ブロガープロフィール

アーカイブ

カテゴリ

ブログネットワーク

アルファブロガー

佐々木俊尚 ジャーナリストの視点グーグルはストビューで「よそ者」化する
佐々木俊尚 ジャーナリストの視点
クロサカタツヤの情報通信インサイト北京オリンピック
クロサカタツヤの情報通信インサイト
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance新サービスをローンチしました
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
村上敬亮 情報産業の未来図コンテンツ市場14兆円の中身と行方
村上敬亮 情報産業の未来図
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」場所・空間を増幅!?「ロケーション・アンプ」
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」
鈴木健の天命反転生活日記パラレルワールドとしての電脳コイル
鈴木健の天命反転生活日記

読者ブロガー

なにわのITベンチャー社長BlogWEB2.0 じゃなくって PC0.5
なにわのITベンチャー社長Blog
インターネットの裏側を探しましょtaspoの必要性とタバコ屋でのコミュニケーション
インターネットの裏側を探しましょ
電子政府パブリックコメントの抜粋できるだけ検索せずに情報を集める(試してみます)
電子政府パブリックコメントの抜粋
木田わをんのパソコン武士道@Tovas for AppExchangeのセットアップを30分で完了
木田わをんのパソコン武士道
夢幻∞大のドリーミングメディア夢幻∞大のエントリーアクセスランキング(8/29編)
夢幻∞大のドリーミングメディア
ネットのニュース.logMacBook touchは、登場するのか?
ネットのニュース.log

企画特集

DELLが掲げる「新・仮想化アセスメントサービス」DELLが掲げる「新・仮想化アセスメントサービス」
〜企業システムの仮想化環境の構築を支援〜
仮想化環境で求められるストレージの要件仮想化環境で求められるストレージの要件
それに応えるNetAppの実力とは?

新着コメント

たばこによる経済効果よりも関連の損失額の方が何倍も大きいという試算があり......
taspoの必要性とタバコ屋でのコミュニケーション
投稿者:PowerYOGA
こういうのいいですね!ちなみにCNETブログのシステムは全然進化しないですね......
夢幻∞大のエントリーアクセスランキング(8/29編)
投稿者:尊仁
櫻吉さん、いつもお世話になっています。アクセス順に並んでくれるとありがた......
夢幻∞大のエントリーアクセスランキング(8/29編)
投稿者:mugendai
「アダムとイブが楽園を追放されたのは、神様の言いつけを破って禁断の実を食......
毎日新聞社内で何が起きているのか(下)
投稿者:keijizyou
きむこうさん、コメントありがとうございました。 > 「お客さんが絶対必要......
新しい開発手法:初期にユーザインターフェースを完璧に作れば、最高の要件定義になる 2
投稿者:生島勘富

ブログネットワークとは?

CNET Japan ブログネットワークは、元はCNET Japanの一読者であった読者ブロガーと、編集部の依頼により執筆されているアルファブロガーたちが、ブログを通じてオンタイムに批評や意見を発信する場である「オピニオンプレイス」、また、オピニオンを交換するブロガーたちが集うソサエティです。

広い視野と鋭い目を持ったブロガーたちが、今日のIT業界や製品に対するビジョンや見解について日々熱く語っています。

あなたもブログを書いてみませんか?

CNET Japanやその他サイトが提供するITニュースやコンテンツへの意見や分析、 ビジネスやテクノロジーに対するビジョンや見解について語っていただける方を 募集しています。ご応募はこちらから

ブログの投稿・管理

ブログの投稿はこちらから(※ブロガー専用)

ブログアワード2007開催決定!

今年最も活躍したブロガーを表彰します。詳細はこちらから

αマークって?

これは、CNET Japan 編集部の依頼に基づいて執筆されているCNET Japan アルファブロガーによるブログの印です。

Good!って?

CNET Japan ブログネットワーク内で拍手の代わりに使用する機能です。ブログを読んで、感激した・役に立ったなど、うれしいと思ったときにクリックしてください。多くGood!を獲得した記事は、より多くの人に読まれるように表示されます。

レビュー

[レビュー]高い信頼性を普通に使う地球に優しい電源ユニット--Antec EarthWattsシリーズ EA-650
“自作ユーザーは、電源ユニットに何を求めるのか?”出力なのか、安定性なのか、それとも機能性なのか?難し
今週の新製品総チェック:ノート、デスクトップ、UMPCまでPC秋モデルが続々
富士通、NEC、東芝などのPCメーカーから続々と新製品が登場した。ノートPC、デスクトップPCに加え、注目の
今週の新製品総チェック:薄さ13.9mmのサイバーショット登場!NEC「LaVie」はデザインモデルが
最薄部13.9mmのソニー「サイバーショット」、ニコンのGPS内蔵デジカメ「COOLPIX」など、機能性、デザイン性