オリンピックも終わり、暑い夏も過ぎ、まもなく2004年秋である。2004年秋といえば、1994年秋から10年。1994年秋といえば、ネットスケープ。ネットスケープのブラウザダウンロードが始まったのが1994年11月なので、あと2カ月もすると「インターネット10年」みたいな特集記事がネット上を溢れることになるだろう。本欄でも、きっとそういう話をこれから何度となく取り上げていくことになると思う。
先駆者達にとっては誘惑ばかりの10年
New York Timesの2つの記事を読んでいて、この10年という歳月の長さを思った。特に10年前に誰よりも早くインターネットで何かを始めた先駆者たちにとって、この10年とは、次から次へと新しいチャンスが目の前を通り過ぎていった10年だったはず。そんな新しい誘惑ばかりの10年間、たった1つのことをやり続けるというのは、簡単なようでいちばん難しいことだったのかもしれない。
その記事の1つ目は、「It All Started With a Good Cup of Coffee」というロンドンのインターネットカフェの話だ。もう1つは、サンフランシスコの頑固な起業家、CraigslistのCraig Newmarkの話。「An Online Pioneer Resists the Lure of Cashing In」である。
10年前に創業したインターネットカフェ
ロンドンのインターネットカフェ「Cafe Cyberia」は、10年前に創業された。創業者はEva Pascoeという当時29歳の女性。
「Ms. Pascoe was 29 and working on a Ph.D. in cognitive psychology at the University of London when she set up the cafe for about £20,000 ($35,500). Ms. Pascoe, who calls herself a cyberfeminist, modeled Cafe Cyberia after a project in which she studied how women interacted with computers. Her goal was to encourage more women to become Internet-literate.」
当時彼女はロンドン大学で認知心理学の博士課程にいた。自称サイバーフェミニスト。インターネットカフェ創業の理由は、より多くの女性にInternet-literateになってほしいと考えたからだったそうだ。
「The first day we opened, there was a queue of men out the door.」
なんて思惑違いのことも起きたけれど、パリのポンピドーセンターにも出店するなど、事業はそれなりに順調に推移した。しかし、
「Like many entrepreneurs, Ms. Pascoe left the business. In 1998, she went on to other projects. About three years ago, the chain of Cyberia cafes was sold to South Korean investors who rebranded them under the name Be the Reds, or BTR, borrowing a cheer shouted by supporters of the Korean soccer team.」
多くの起業家と同じように、1998年に彼女はインターネットカフェ事業を離れる。「she went on to other projects」と書かれているが、このプロジェクトというのは、必ずしも別のベンチャーをいくつも立ち上げたということを意味しない。子育てもプロジェクトだし、大学に戻って博士課程を終えるのもプロジェクトである。いずれにせよEva Pascoeの場合には、創業4-5年で、インターネットカフェ事業に見切りをつけて、人生の新しい局面に乗り出していったわけだ。その後、このCyberiaカフェチェーンは韓国資本によって買収されることになる。
eBayが出資したCraigslist
それに比べてCraigslistのCraigの頑固さ、一徹さの「凄み」は、度を越えている。ロンドンとは違い、サンフランシスコといえば、インターネットブームの中心に位置していた。彼は、90年代後半のこの地の異常なまでの興奮、高揚感にも全く巻き込まれず、会社を一気に巨大化することにも株式公開にも興味を示さず、バブル崩壊後の混迷とも無縁に、ただ淡々と、Craigslistの更新を続けていたのである。Craigslistについては、New York Timesの記事を読む前に、CNET Japan記事「イーベイ、人気コミュニティサイトの株式25%を取得--地域サービスに進出」をざっと読むのがいいだろう。
「eBayが米国時間13日、オンラインコミュニティサイトCraigslistの株式を25%取得したと発表した。」
「1995年創業のCraigslistは、45の都市向けにさまざまな情報を提供するコミュニティサイトで、必要最低限の機能だけを備えた飾り気のないページデザインが特徴だ。網羅されている情報の範囲は、アパートの空き状況やデートの相手探し、野球観戦チケットなど多岐にわたる。同Webサイトは、オンラインで売買を行うユーザーの間で大人気を博しつつあるが、バナー広告のないシンプルなページデザインは創業以来変わっていない。」
また、渡辺千賀Blogでも1年ほど前に、こんなふうに紹介されている。
「ちなみに、Craig's Listは、これだけで恋愛相手から、住む所から、家具から、車から仕事まで、全ての生活情報がただで入手できてしまう恐るべき情報集積掲示板である。ベイエリアに住んでいる人は必見。(他の地域のバージョンもあるが、どれくらい情報が充実しているかは不明だ)もう少しすると、このサイトを運営している偉大なCraigさんのドキュメンタリー映画までできるらしいぞ。」
10年間、小さな所帯でこつこつと
Craigslistは未公開企業なので財務状況の詳細はわからないが、売上高は1000万ドル程度で、ちゃんと利益も出ている。社員は14人。Craigと彼の右腕の他、あとはプログラマーが7人、カスタマーサービスが3人、アカウンティングが2人というおそろしく小さな所帯だ。
「But people involved in several proposed deals said it could be worth $100 million if Mr. Newmark decided to sell to the highest bidder.」
創業者がこの事業を今売却したいと思えば、1億ドルの価値になるとの推測もあるけれど、
「Craig Newmark is the founder and chairman of Craigslist, but his primary job is as its foremost customer-service representative.」
Craigは朝から晩まで、経営というよりも、自らサイトの更新に勤しんでいる様子だ。この記事には、Craig NewmarkがPCに向かって没頭している写真も掲載されているが、写真は雄弁である。
「Craigslist started in 1995 as an e-mail newsletter that Mr. Newmark sent to friends informing them of San Francisco cultural events. As interest grew, the newsletter became an online flea and job market and an essential community bulletin board.」
1995年創業だから、今ではネット列強となったAmazon、eBay、Yahooと同時期の創業。Googleよりも3年早い。
「Mr. Newmark said that eBay had agreed to stay out of management decisions and would not try to influence him to make a greater profit. EBay's one-quarter stake was acquired from an existing minority shareholder in Craigslist, meaning that Mr. Newmark and his executive team still hold the most influential position.」
eBayが資本参加したことについてCraigはこう語る。10年たってもExitできないのでCraigslist株を手放したいと考えた「an existing minority shareholder in Craigslist」がきっと居たのであろう。その人の株式をeBayが引き受けたらしい。eBayは経営にタッチせず、「もっともっと大きな利益を上げろと、影響を及ぼそうとする」こともしない、という約束なのだそうである。Craigは、どこまでも頑固な人のようである。
こんなふうにして頑固一徹に、10年かけてこつこつとネット事業を作っている人もアメリカには居るのだ、ということで、今日はこれでおしまい。興味のある方はすぐに原文をあたってください。New York Times記事の無償期限が迫っていますから。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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