最終更新時刻:2008年8月30日(土) 2時12分

-

LOOP連載を終えて - シリコンバレーの重鎮が考える未来

公開日時:
2004/04/23 09:15
著者:
umeda

残念ながら『ダイヤモンドLOOP』が休刊になり、連載中だった「米国ハイテクワールドに学ぶ破壊的創造のマネジメント」というインタビューシリーズも自動的に終わることになった。しかし、同誌編集部のご好意で、この連載内容を、CNET Japanに転載してアーカイブとして残すことができた。僕の手元には、インタビューした人達の肉声をテープから起こしたファイルもあるので、これからも本欄で、必要に応じて、原文(肉声)も合わせて参照しながら考えていくことにしたい。

- レスリー・ヴァデス 前インテル・キャピタル代表

- マイケル・ラムジー ティーボCEO

- ロジャー・マクナミー インテグラルキャピタル パートナーズ/シルバーレイク・パートナーズ 共同創設者

- ラリー・プロブスト エレクトロニック・アーツ会長兼CEO

- オミッド・コーデスタニ グーグル 業務開発・営業担当副社長

- ミッチ・ケイパー オープンソース・アプリケーション財団代表

- マーク・ベニオフ セールスフォース・ドットコム会長兼CEO

- ウィリアム・ハンブレクト WRハンブレクト会長兼CEO

- アン・マルグリーズ MIT オープンコースウェア エグゼクティブディレクター

- リード・ホフマン リンクトイン CEO

- ブルース・シュナイアー カウンターペイン・インターネット・セキュリティ創業者兼CTO

と、ここ1年の間に、全部で11人の話を聞いたが、本当に勉強になった。特に、こういう機会でもなければ、会ってゆっくり話など絶対に聞けなかったであろうシリコンバレーの重鎮中の重鎮、レスリー・ヴァデスとウィリアム・ハンブレクトから話が聞けたことは、得がたい経験であった。

この60代の重鎮2人に共通する話し方の特徴は、余計なことはいっさい話さない、言葉は簡潔・明瞭で無駄が全くない、ということ。CEOたち(マイケル・ラムジー、ラリー・プロブスト、マーク・ベニオフ、リード・ホフマン)が、自分が話したいこと、話すべきことを、ビジョンとして延々と語るのとは好対照だった。

オープンIPOを採用しなかったGoogle

結局、ウィリアム・ハンブレクトが提唱する「オープンIPO」

「投資銀行界の重鎮、ウィリアム・ハンブレクト氏が5年前に提唱した「オープンIPO」という考え方がシリコンバレーを中心に再評価を集めている。機関投資家へのヒアリングではなく、オークションで公開価格を決めるメカニズムが、公開予備軍の心をとらえた。グーグルも採用を検討中といわれる。ハンブレクト氏は、オープンIPOでこそ企業は顧客ベースに近い安定的な投資家ベースを確立できると説く。」

を、Googleは採用しなかったわけだが、そのあたりのことを彼はこんなふうに話していた。

「グーグルについてはコメントできません。いえるのは次のことです。オープンIPOに敵対するのは、まず従来の引受け銀行。彼らは、オープンIPOには機関投資家が参加しないと説いて、会社側の関心を挫こうとしている。だがそれは嘘です。現に過去2件のWRハンブレクトのオファリングには、70の機関投資家が参加しました。思うに、J.P.モルガンにしてもゴールドマン・サックスにしても、変化するのが難しいのでしょう。彼らには長い歴史がある。エスタブリッシュメントを重んじる法律事務所やベンチャーキャピタルとの深いつながりがある。目には見えないプレッシャーがかかるのではないでしょうか。」

インタビューの文章は「ですます」調でLOOP編集部がまとめたものだが、ウィリアム・ハンブレクトの話し方は、「だ」を繰り返す断定口調に読み替えていただくとより感じが出る。

シリコンバレーは今後も知財ビジネスの心臓部であり続ける

そして、シリコンバレーの今後について、彼は、迷いもなくこう語った。

「I personally think that Silicon Valley has produced the culture and a combination of circumstances that will probably allow it to continue to be the heart of the intellectual property business in the United States. It still attracts the brightest, smartest people. I mean, just look at any of these successful companies. They have really bright people from all over the world. You know, it isn’t just the U.S. I mean the really bright technology minds are attracted here. And I think that’s probably more important than anything, that there’s sort of a critical mass of bright people that attract other bright people. And as long as that keeps going, I think it’ll always be the place where the leading companies develop. Application’s spread out, but the real thought leaders, the real basic breakthroughs seem to happen here.」

シリコンバレーは米国における「intellectual property business」の心臓部であり続ける。シリコンバレーは「the brightest, smartest people」を依然として惹きつけている。成功した会社を見てみるがいい。全世界から本当に頭のいい連中を集めている。「the really bright technology minds」はここに呼び込まれている。そして、何よりも大事なことは、頭のいい連中のクリティカルマスが、頭のいい連中を呼び込むことだ。それが続く限り、最先端を走る企業(the leading companies)が生まれる。アプリケーションは世界中に広がるだろうが、本当の「thought leaders」、本当の「basic breakthroughs」はここで生まれるように思える。

ウィリアム・ハンブレクトの言う「the really bright technology minds」というのはなかなか言い得て妙だが、シリコンバレーにはそういうテクノロジーに関する世界中の最も尖がった才能だけが残り、シリコンバレーは「the heart of the intellectual property business」となり、「the leading companies」と「the real thought leaders」と「the real basic breakthroughs」を生み出すが、「Application’s spread out」、その応用分野の開発は世界中に広がっていく。彼のビジョンは、「ものすごく少数の尖った才能と彼らが生み出す圧倒的な付加価値」以外にほとんど重きを置かないという、かなり過激な部類に入るシリコンバレー観である。本欄で、シリコンバレーには目に見えない階層構造があり、その頂点に「殿堂入りした重鎮たちのネットワーク」があるというような話をしたことがあるが、ウィリアム・ハンブレクトのこのビジョンは、この小さな殿堂コミュニティ(テクノロジー・エスタブリッシュメントとでも呼ぼうか)の感覚を代表するものと言っていいだろう。

来週3日間はゲストブログ

さて、連休直前の来週月曜日から水曜日までの3日間は、シリコンバレーに日本からやってきた「the really bright technology minds」の1人、石黒邦宏さんにゲストブロガーをお願いした。石黒さんについては、「天才プログラマーの身体」という文章を以前に書いたが、僕が尊敬する年少の友人の1人である。最初にゲストブログをお願いしたときは、「僕はプログラムによって自分を表現することができているから、文章は特に書く必要はない」というようなことをおっしゃっていたが、何とか引き受けていただけることになった。

石黒さんのこれまでの経験の中で特筆できる点は、(1)自作した約5万行からなる「シスコシステムズのルータと同じ機能のソフト」のソースコードをオープンソースとして公開し、(2)そのコードの質がシリコンバレーのテクノロジストたちによって高く評価されたことが発端になって、(3)日本からシリコンバレーに移り、自ら創業者としてベンチャー「IP Infusion」を創業し、(4)現在も同社CTOとしてベンチャーにおけるソフトウェア開発のリーダーシップを取っている、ということである。もともとは文学や哲学書を耽読し続けるという学生時代を送った「根っこは文系の人」であるというのも、彼の人間としての面白さの1つ。どうぞお楽しみに。

僕のエントリーは、5月6日の連休明けから再開します。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

ブログにコメントするにはCNET_IDにログインしてください。

この記事に対するTrackBackのURL: 

このブログについて

ブロガープロフィール

アーカイブ

カテゴリ

  • 未分類

ブログネットワーク

アルファブロガー

佐々木俊尚 ジャーナリストの視点グーグルはストビューで「よそ者」化する
佐々木俊尚 ジャーナリストの視点
クロサカタツヤの情報通信インサイト北京オリンピック
クロサカタツヤの情報通信インサイト
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance新サービスをローンチしました
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
村上敬亮 情報産業の未来図コンテンツ市場14兆円の中身と行方
村上敬亮 情報産業の未来図
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」場所・空間を増幅!?「ロケーション・アンプ」
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」
鈴木健の天命反転生活日記パラレルワールドとしての電脳コイル
鈴木健の天命反転生活日記

読者ブロガー

インターネットの裏側を探しましょtaspoの必要性とタバコ屋でのコミュニケーション
インターネットの裏側を探しましょ
木田わをんのパソコン武士道@Tovas for AppExchangeのセットアップを30分で完了
木田わをんのパソコン武士道

企画特集

DELLが掲げる「新・仮想化アセスメントサービス」DELLが掲げる「新・仮想化アセスメントサービス」
〜企業システムの仮想化環境の構築を支援〜
仮想化環境で求められるストレージの要件仮想化環境で求められるストレージの要件
それに応えるNetAppの実力とは?

新着コメント

タバコにはカドミウムや鉛,ベンゼン,アセトンが含まれます 乾電池や殺虫剤......
taspoの必要性とタバコ屋でのコミュニケーション
投稿者:fzs600.zzr1400
たばこによる経済効果よりも関連の損失額の方が何倍も大きいという試算があり......
taspoの必要性とタバコ屋でのコミュニケーション
投稿者:PowerYOGA
こういうのいいですね!ちなみにCNETブログのシステムは全然進化しないですね......
夢幻∞大のエントリーアクセスランキング(8/29編)
投稿者:尊仁
櫻吉さん、いつもお世話になっています。アクセス順に並んでくれるとありがた......
夢幻∞大のエントリーアクセスランキング(8/29編)
投稿者:mugendai
「アダムとイブが楽園を追放されたのは、神様の言いつけを破って禁断の実を食......
毎日新聞社内で何が起きているのか(下)
投稿者:keijizyou

ブログネットワークとは?

CNET Japan ブログネットワークは、元はCNET Japanの一読者であった読者ブロガーと、編集部の依頼により執筆されているアルファブロガーたちが、ブログを通じてオンタイムに批評や意見を発信する場である「オピニオンプレイス」、また、オピニオンを交換するブロガーたちが集うソサエティです。

広い視野と鋭い目を持ったブロガーたちが、今日のIT業界や製品に対するビジョンや見解について日々熱く語っています。

あなたもブログを書いてみませんか?

CNET Japanやその他サイトが提供するITニュースやコンテンツへの意見や分析、 ビジネスやテクノロジーに対するビジョンや見解について語っていただける方を 募集しています。ご応募はこちらから

ブログの投稿・管理

ブログの投稿はこちらから(※ブロガー専用)

ブログアワード2007開催決定!

今年最も活躍したブロガーを表彰します。詳細はこちらから

αマークって?

これは、CNET Japan 編集部の依頼に基づいて執筆されているCNET Japan アルファブロガーによるブログの印です。

Good!って?

CNET Japan ブログネットワーク内で拍手の代わりに使用する機能です。ブログを読んで、感激した・役に立ったなど、うれしいと思ったときにクリックしてください。多くGood!を獲得した記事は、より多くの人に読まれるように表示されます。

レビュー

[レビュー]高い信頼性を普通に使う地球に優しい電源ユニット--Antec EarthWattsシリーズ EA-650
“自作ユーザーは、電源ユニットに何を求めるのか?”出力なのか、安定性なのか、それとも機能性なのか?難し
今週の新製品総チェック:ノート、デスクトップ、UMPCまでPC秋モデルが続々
富士通、NEC、東芝などのPCメーカーから続々と新製品が登場した。ノートPC、デスクトップPCに加え、注目の
今週の新製品総チェック:薄さ13.9mmのサイバーショット登場!NEC「LaVie」はデザインモデルが
最薄部13.9mmのソニー「サイバーショット」、ニコンのGPS内蔵デジカメ「COOLPIX」など、機能性、デザイン性