昨日ご紹介したダン・ギルモアのコラムは、先週掲載のSan Jose Mercury Newsが組んだ中国特集の一環で書かれたものである。
今日は、シリコンバレーから見える中国、ということで、この特集を少し読んでみよう。特集は、「China's software schools evolve」、「China, partner to U.S. tech firms, is also a fast-growing threat」、「U.S. tech giants invest in future competitor」、「Microsoft hopes for return on costly investment in China」から成っている。
製造ではなく人材面の脅威
日本から中国を見る視点とのいちばんの違いは、ソフトウェアと半導体とグローバル人材という観点を重視し、製造業という観点を軽視することではないかと思う。特に、人材面での脅威については、昨日ご紹介したダン・ギルモアのコラム「Now is time to face facts, make needed investment」の中でこう書かれる、
「And because the world economy is being flooded with well-educated people, many of whom speak English and are willing to work for a fraction of what Americans earn.」
「英語を話す、しかも十分に高等教育を受けた厖大な数の人たちが洪水のごとく溢れ出て、本来はアメリカ人が稼いでいたはずの部分を食っていく」というイメージは、現代のアメリカ人にとって、実にリアルな脅威なのである。英語を日本語で置き換えてイメージしてみたらいい。中国とインドの人が皆、生まれながらにして日本語を流暢に話すと仮定したら、日本に住む日本人も、ジョブ・セキュリティという面で、ものすごい脅威を感じるであろう。
丸抱えで人材を育てる米国企業
「China's software schools evolve」は、北京大学が作ったソフトウェア大学の話である。注目すべきポイントは、いかに中国のソフトウェア大学が、アメリカ企業とタイトな関係になっているかというところである。
「Inside the software school's gleaming marble halls, students work in state-of-the-art labs funded by IBM, Microsoft, Sun Microsystems, Motorola, Oracle, Intel and other U.S. technology firms eager to attract graduates to work in the companies' rapidly expanding businesses in China. The software school works closely with Chinese and foreign corporations, basing its curriculum on industry needs.」
学生は、IBM、マイクロソフト、サン、モトローラ、オラクルがカネを出して作った最先端ラボで働き、産業界のニーズに合わせたカリキュラムで勉強する。
「Students specialize in subjects such as integrated-circuit design, information security, digital arts design and entrepreneurship, with much of the teaching done in English.」
「Once a week, she takes classes in Web services, data mining and customer-relationship management, all taught by professors from the United States.``A lot of my classmates have gone to many big companies such as Intel, Microsoft, IBM and Motorola for their internships,'' she said.」
授業も英語、先生もアメリカの教授。インテル、マイクロソフト、IBM、モトローラでインターンシップ。
「To introduce concepts and practices from abroad, the school has recruited U.S. technology executives and academics as its department heads, including professionals from Microsoft, the University of California-Berkeley and Rensselaer Polytechnic Institute.」
ソフトウェア大学の部門長もアメリカから招いた。その中には、マイクロソフトの人もいる。
「Unlike most Chinese universities, the software school gets much of its funding from foreign companies. They have given more than $2 million in donations, grants and equipment, with IBM accounting for about one-third of the total.
Western companies see their support of the school as good for their expanding business in China. ``By training the future players of technology in China,'' IBM will gain access to skilled technical talent, said Xiaoping Qiu, manager of university relations at IBM China.」
運営資金も、IBMをはじめとする欧米企業が出している。まぁ、米国の企業と大学によって完全に丸抱えされた大学ということだ。中国など行ったことがない一般のアメリカ人が、これを読んで、ぞうっとする気分というのかな、そのあたりがおわかりいただけるだろうか。
学生のインターンシップに関しては、「Microsoft hopes for return on costly investment in China」の中にも、マイクロソフトが中国に作ったラボが170人の研究者(フルタイム)に加えて、200人の学生をインターンとして雇っているという記述があり、
「The company has granted $6,000 scholarships and trips to the United States for more than 60 students. Full-time student interns are paid $400 to $500 a month, double the average salary of their parents.」
フルタイム学生インターンの月給は400ドルから500ドル。それでも両親の平均給与の倍とのこと。
愛国心と資本主義の間で揺れる気持ち
「U.S. tech giants invest in future competitor」、は半導体の話なのだが、この中に、インテルCEOのクレイグ・パレットのコメントがある。
「People in China ``are capable of doing any engineering job, any software job, any managerial job that people in the United States are capable of doing,'' said Craig Barrett, Intel's chief executive officer, in an interview in Beijing.
Intel, with 2,400 employees throughout China, will have invested more than $1 billion by the end of next year into the world's most populous country, making memory chips and microprocessors and hiring top Chinese engineers for development work.」
もちろんインテルは中国に積極的に投資して、人もたくさん雇っている。
「But Barrett remains ambivalent about the long-term implications of China's development.
``As CEO of Intel, my allegiance is to the shareholders of Intel and to the success of the company,'' he said. ``We go after the most cost-effective resources around the world, no matter where they are.''
However, ``as an American citizen, I would have to be worried about whether jobs that are created are created outside the U.S. . . . As a citizen, I see all these resources and I think this puts my country in danger,'' he said.」
インテルCEOとしては、インテルの株主、インテルの成功のために、最もコスト効率的なリソースを世界中に探しにいくのは当然だ、としながらも、1人のアメリカ国民としては、このリソース(厖大なアメリカ人以外の優秀なワーカーの存在)は、自国を危機に陥れることになるのだから複雑な気持ちだと、アンビバレントな気分を正直に表明している。
そして早熟のIT中高生という新興勢力の台頭も
さてちょっと話は変わるのだが、「And a Teen Shall Lead Them」というSF Weeklyの記事が面白かった。15歳のCEOがテーマである。
「How 15-year-old Ben Casnocha brought e-government to Cupertino, Menlo Park, Burbank, and other cities across California」
がサブタイトルだが、15歳の少年が、学校に行きながら起こした会社が、e-government分野で、そこそこの成功を収めはじめているという話。
中国、インドからの厖大な量の人々の参入に加え、ITに長けた早熟の中学生、高校生だって、センスさえよければ、新しいサービスやアプリケーションをごく数人で作ってしまうこともできる世の中になったのも事実。アメリカ人ワーカーの苦悩は、とてつもなく深いのである。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
mishimayoshihisa on 2004/04/13
今北京に住んでいるので中国の記事が気になる。この国は階層的かつ多様である。月収も数千円から数百万円まで存在してその層毎に考え方も消費形態も違う。北京と上海では気候、風土、文化が別の国のように違う。この国のどの断面を切取ったを明示していない記事は、いろんな階層から都合のよい事実をつまみ出している気がする。そんな優秀な学生が月給400ドルで我慢するわけないでしょうが。上海の一部では家賃も物価も日本と変わらなくなってきているそうである。中国を見ないで記事を書く人の多いこと!
Mishima Yoshihia on 2004/03/25
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