最終更新時刻:2008年10月10日(金) 23時50分

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日本企業の40代に提案-バイアウトを活用して外に出よう

公開日時:
2004/03/17 09:39
著者:
umeda

バイアウトファンド連合がEDSの子会社を約20億ドルで買収した。買収の中心になったのは、本欄でもたびたびご紹介してきたSilver Lake Partnersである。

「Three large firms, including Silver Lake Partners of Menlo Park, have agreed to buy a subsidiary of Electronic Data Systems Corp. for $2.05 billion in cash. The deal would be the largest private investment ever made in a technology company.」

「Silver Lake Partners teamed up with Bain Capital of Boston and Warburg Pincus of New York as equal investors to acquire Plano, Texas-based UGS PLM Solutions, which makes product management software.」

テクノロジー企業のバイアウトでは史上最大規模。EDSが手放したのは、UGS PLM Solutions。日本でも事業展開する「製品ライフサイクル管理ソリューション」に特化した会社である。

「UGS PLM has 42,000 clients, and last year reported revenue of $897 million and net income of $104 million, according to the company.」

全世界に42000社の顧客を持つ、ざっくり言って1000億円くらいの売り上げで100億円くらいの純利益を上げているSI大企業の子会社を、バイアウトファンドが2000億円くらいの現金を出して買収した、というニュースである。ファンド側は、この会社のマネジメントを強化して、もっといい会社にして企業価値を高めて再上場させて、その結果のキャピタルゲインを狙うわけである。EDS側は、事業を手放すことで、今、キャッシュを得るわけだ。

バイアウトファンドが通常ターゲットにするのは成熟産業である。だから、このバイアウトのニュースは、IT産業全体が成熟してきた証だ。ただ、成熟化は決して悪い話ばかりとは言えない。日本にもバイアウトファンドが増えているが、これは日本企業のミドルにとっての朗報なのだ、という視点を今日はご提供したいと思う。本欄は、特に昨日がそうだったように、10代、20代の若い人達をターゲット読者と想定して書いているのだが、どうやら僕と同世代の人達もずいぶん読んでくださっているようなので、今日は僕から同世代の日本企業人へのメッセージです。

日本企業のミドルへの提案

結論から言おう。「大学を出てすぐ日本の大企業に就職して約20年」という日本企業のミドルは、子会社を持って外に出ることを構想せよ。

日本企業ミドルを取り巻く環境は厳しい。学生時代の友人やクライアント企業の同世代の人達と話をしていても、なかなか明るい話が出てこない。

しかし、日本の一流大企業に勤めるミドルの潜在能力、知的レベル、モチベーションは圧倒的に高いのである。ただ、上がつかえていたり(日本企業は本当に高齢化していますから)、組織が硬直化していたり、色々な理由から、そのミドルの力が解放されていない。

その会社でどんなにいい仕事をしてきていても、「1つの会社に居続けただけでは競争力がないなぁ、レジメがつまらない、市場での価値はあまり高くありませんねぇ」なんて、外の人から簡単に言われてしまって傷ついたりする。確かに、40歳過ぎてからいきなり会社を辞めて、いきなり個人として外に出てやっていけるかと言えば、一部の例外を除き、外での経験を積む機会がなかったハンディゆえ、若いときから転職を繰り返して外で実績を積んだ人に対して、圧倒的に不利だ。30代半ばくらいまでならば、もう一回、外のルールでゼロからのスタートもできるが、40過ぎれば、失うものも増えてきて、なかなかそうもいかない。

日本企業のミドルが得意なことは

では、日本企業ミドルが最も得意なことは何なのだろう。その企業が持つ広義のインフラ(人的資産、社風、技術、製造能力、販売チャネルetc)をすべて活用して、その企業グループ内の適切なサイズの事業を経営することなのである。これは技術者にだってあてはまる話だ。経営チームの中に技術者は絶対必要だからだ。

これを外部資本と組んで実現するのが、マネジメント・バイアウトである。

このニュースにおけるUGS PLM Solutionsについての事実関係は知らないので想像で書くが、ファンドが内部生え抜きの経営陣をかなり信頼できると見たから、このディールが成立したはずで、生え抜きの経営陣は今、間違いなく、新しい環境に期待してのエネルギーが湧き上がっていると思う。

日本企業の中には厖大な数の「わけのわからない事業群、子会社群」が存在している。UGS PLM Solutionsの場合は売上高1000億円だが、別にそのサイズはもっと小さくてもかまわない。自分が勤めている企業グループ内に存在する「売上高が既にある程度のサイズになっている事業」(少しは利益を出しながら、そこそこ、まわっている事業)を5年から7年かけて、もっといい会社に作り変える、ということだったら、「それは俺が得意とするところだ、外に出て何か新しいことをやるよりもずっと自分にとっていい」と思うミドルの人たちがたくさんいるだろう。そういう子会社や事業部門の問題点は、実は内部に潜んでいるのであり、そういう内部の問題は、外部資本の注入と内部に精通した有能なミドルの組み合わせで一気に解決できる場合が多い。

そんな可能性に賭けて、もし5-7年かけてその事業の価値が増えたら、その増分を成功報酬として応分に分けましょうね、というのが子会社経営者に対するファンドからのストーリー。その子会社や事業はいったんバイアウトファンドにお売りなさい、従業員も含めて全部引き受けた上でリスクを取って今キャッシュを払いますよ、というのが、ファンドから企業に対するストーリーなのである。

日本企業ミドルは、自ら子会社や事業部門に行き、こういうディールを仕掛け、その子会社や事業部門を持って外に出ることを考えるべきなのである。

ミドルリスク・ミドルリターンの選択肢

僕はシリコンバレーで起業ということの難しさを毎日毎日さんざん見ている。むろん成功すれば素晴らしいし達成感もあるだろうが、ゼロから何かを作るというのは恐ろしくたいへんなことだ。若さ、過剰なエネルギー、失敗しても何度でもまたゼロから始められるだけの時間的余裕、そういうものがないと本当に辛い。

それに比べて、子会社や事業部門のマネジメント・バイアウトならば、もう既に売り上げが存在する事業をよくするという作業であるから、たとえ創造性がなくても成功確率はかなり高いし、成功したときのリターンも比較的大きい。ベンチャーをハイリスク・ハイリターンとすれば、ミドルリスク・ミドルリターンと言える。しかも、仮に失敗しても、こういうマネジメント・バイアウト経験を40代に積んでおくと、50代になったときに、つまり2010年以降に、日本できっとたくさん生まれてくるはずの「数十億円から数百億円規模の事業を経営できる経営者マーケット」の候補者リストにリストアップされてくるはずである。そうなれば食いっぱくれは絶対にない。日本に最も足りない人材の1人にエントリーできることになるからだ。

これまでの日本企業の子会社経営というのは、ほんの一部の例外を除けば、本当にひどいものだったし、そこにはまだメスが入れられていない。しかし日本にもようやくバイアウトファンドを中心に、外部資本が揃うようになってきた。間接金融から直接金融への流れはもう止められない。機は熟している。そこで、40代のミドルにとっての最後の難関は、50代との世代間闘争となる。

日本企業の子会社群は、50代の天下りポスト。これまでと経営構造が変わらなければ、その世代の人達に利する。40代ミドルはトップと結託して、「選択と集中」の議論を深め、戦略的な子会社経営のあり方や、周辺事業の取り扱いを明確化すること。そしてその上で、外部資本をレバレッジして、マネジメント・バイアウトを戦略的に志向し、ただ企画するだけでなく、自らも事業や子会社と一緒に外に出て行くという道を、1つのキャリアパスとして模索するべきなのである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

1

素晴らし提言です。

>そんな可能性に賭けて、もし5-7年かけてその事業の価値が増えたら、その増分を成功報酬として応分に分けましょうね、というのが子会社経営者に対するファンドからのストーリー。その子会社や事業はいったんバイアウトファンドにお売りなさい、従業員も含めて全部引き受けた上でリスクを取って今キャッシュを払いますよ、というのが、ファンドから企業に対するストーリーなのである。

但し。
じゃあ、売るのは誰だ。その事業部門を抱える、
大組織の会社の経営陣です。
その彼らに、上述の意思決定をする思考回路が
あるかなあ、と思います。

「え、この事業部門を買うやつがいるのか、
ならば、とっておこう。」と考え始めるでしょう。

ご指摘のように、問題は社内にあり、社内問題の
くびきから外れるなら、その価値。外れなければ
従来の低い価値、とは思わない。思い至らない。

最終ガバナンスの問題に行き着くように思います。

  sansara on 2004/03/18

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