エンタープライズIT市場にさらなる価格破壊は進むのだろうか。
苦境に立つサンの現状を総括して秀逸なFortune誌の最新号「Scott McNealy's Lonely Battle Against Eternal Night」(冒頭のみ無償で、記事全体は購読者のみアクセス可能)は、サンの現在の戦略はそういう文脈で考えるべきだと主張する。
「For the nearly two decades he has run Sun Microsystems - the longest tenure of any current high-tech CEO besides Oracle's Larry Ellison - he has always said and done what others wouldn't or couldn't, and he's often been right.」(スコットは、オラクルのラリー・エリソンと並んで、20年の長きにわたってハイテク企業のCEOを勤めているが、他の誰もが言えないようなことできないようなことを有言実行し続け、彼の言ったことは皆、正しかった。)
という書き出しで始まる。そういう成功で90年代のヒーローとなったスコット・マクネリーが、今やっている最後の大勝負のキーワードは、「cutting the high cost of corporate computing」なのだと。
「Now McNealy has a new crusade: cutting the high cost of corporate computing. Once again he's saying what his peers can't or won't - that hardware and software companies, including Sun, have been gouging customers. Customers already know that, but wait! McNealy says Sun has a way to reduce the $1 trillion a year U.S. corporations and governments spend on IT by a factor of ten.」
これまでコーポレート市場でさんざん暴利をむさぼってきたハード会社、ソフト会社の範疇にサンも入るわけで、サンも含めた競争相手は皆、そんなことは言い出さない。そういう大胆なことをまたサンは言い始め、やり始めている。スコットは、米国大企業・政府のIT支出を一桁削減できる方法があると主張する。スコットは最後の勝負をそこに賭けているのだという見立てだ。
「The pitch goes like this: High tech no longer needs to be sold in pieces that corporate customers must cobble together; it will be sold instead as pretested systems that work with everything else a company owns right out of the box, much like consumer PCs today. "Only in our industry do we create our own unique jalopies," McNealy says. "You don't do that when you buy a car. But in high tech somehow we've become obsessed with selling customers componentry."」
これがスコット・マクネリーのピッチ。エンタープライズIT世界は、部品単位でバラバラに売られる世界。箱からあけたらすぐにエンタープライズのすべての資源と協調して動くテスト済みのシステムが売られるべきではないか。
この記事は、こんな冒頭の議論から、そういうビジョンが仮に長期的に意味を持つとしてもサンがその担い手になり得るか否かはよくわからない云々、というような調子で、今のサンの経営的苦境について言及する。この部分は既にいろいろなところで語られている話と大同小異なので省略。
スコット・マクネリーの不断の努力
記事の2ページ目(ウェブ上のページで)の
「Even if you don't accept McNealy's vision for the future, you have to give him credit for tenacity.」(もしあなたがスコット・マクネリーのビジョンを受容しないとしても、彼のその方向への不屈の努力は称賛に値する)
という文章に続く、スコットがこれまでに打ってきた施策の一覧は、こうなっている。
(1) Ed Zanderに任せていたday-to-day managementを自ら掌握し、5層あった経営階層を2層カット。
(2) 「software and low-end systems」つまり、ソフトウェア事業とローエンドシステム事業に責任者を任命し、直接スコットの監督下に置いた。
(3) ソフトウェアやローエンドシステムを売ってインセンティブが出るようにセールスの仕組みを変えた。
(4) デルとも十分競争できる「inexpensive servers」を5月に市場に投入。
(5) ソフトウェアの価格もぐんと下げた。デルがハードをコモディティ化したのなら、自分たちはソフトウェアをコモディティ化するのだと宣言。デルはハード(安い)とソフト(高い)を別売りするが、サンはハードとソフトをバンドルすることで対抗し、十分に価格競争ができる。関連箇所を引用しておこう。
「For $100 an employee, corporate customers can now get not only Sun's top operating system, Solaris, with their gear but also Linux and Sun's entire suite of 224 "middleware" products. (Those are programs for running corporate e-mail, websites, security and authentication, transaction processing, and so forth.) The thinking, says Jonathan Schwartz, the newly minted software chief, is to offer a price so compelling that customers won't be able to resist trying the package. Sun also announced, for $50 an employee, a Linux-based equivalent of Microsoft Windows and Office, programs that Microsoft, even with corporate discounts, charges hundreds of dollars for. "Just as Dell commoditized hardware, we are going to commoditize software," says Schwartz.」
「Schwartz contends that Sun can keep its own prices low by bundling together its software and hardware. (With Dell machines, most of the software is sold separately.) So Sun could win if customers were willing to convert en masse to its software - a big if. Competing with Microsoft on the desktop seems like an even tougher fight.」
(6) サンの本社に「a briefing center」を作り、スコットも陣頭指揮で顧客との直接商談を進める体制を強化。
(7) データセンターマネジメント・サービスのN1。
(8) そしてNiagaraチップ。
しかし、こうした諸施策の問題点は、苦境に立つサンにとっての短期的特効薬とならないことではないか、とこの記事は総括する。
「The trouble with these initiatives is that it's difficult to see how they'll rekindle Sun's growth anytime soon - and investors probably won't give McNealy much more time. N1 and Niagara may be fascinating, but any significant contributions to earnings are years away. Sun's middleware products may be the cheapest around, yet Sun has tried and failed twice in this market in the past five years. Schwartz says the company has redesigned its product line so that it all works together seamlessly this time, but BEA and IBM, the largest players in the $4-billion-a-year middleware market, are also investing heavily to improve their offerings.」
そして、このターンアラウンド戦略は遅きに失したのではないか、と結論付ける。
「The bottom line is that McNealy's turnaround strategy may be too late.」
10年前、サンはエンジニアリング・ワークステーションからサーバーに事業を転換して大成功したが、それはワークステーションのシェアが落ちる前に将来を予見して手を打てたからで、今回はやっぱり一手遅かったのだと。
サン、非公開化の可能性も
さて、サンはこれからどうなっていくのか。
シリコンバレーでいろいろと噂される「どこかがサンを買収するのではないか」というのも、アップルがそうしたような思い切ったリストラで会社のサイズを小さくしてニッチで生きていく決心をするべきではないかという案も、強気のスコットは飲みそうもないと結論付けるこの記事によれば、いましばらくはスコットの強気のターンアラウンド戦略の成否を見守るしかない、というのが結論のようだ。
本連載9月2日「シーゲートに続いてサンの非公開化は実現するか?」では、サンの非公開化の可能性について、シーゲートを非公開化して再び上場させて成功したシルバーレイク・パートナーズの二号ファンド調達の話に絡めて議論したが、僕は、被買収や大リストラと並んで、非公開化からゆっくり戦略転換して再上場、という可能性もあり得るシナリオのではないかと、相変わらず考えている。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
山崎牧雄 on 2003/10/31
公開:資金調達に道。但し、説明責任大。しかも経営の舵取りを決定する際、マーケットを意識しなければならない(=一人で戦略を決められない)。マーケットに理解を得られず、他の投資家が、「俺ならこうする」と逆提案してきた場合、乗っ取られる=自分で経営できなくなる可能性あり。
非公開:上の逆。資金調達がしんどい。しかし、誰に掣肘されることなく、オウンリスクで経営戦略を決定できる。ただし、第三者を説得するというステップを踏んでいないことから、独りよがりの経営に陥るリスク(その結果破綻)をそこで取っていることになる。
こういう選択肢が明確にあり、事業経営者が選択できる、というのが、本当に米国型資本主義の素晴らしいところだなあ、といつもながらため息が出ます。
sansara on 2003/10/30
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コンサルタントの山崎です。
先週、日経新聞の一面トップに『富士通とサンがサーバ上位で提携』という記事が掲載され、多くのIT業界
関係者の関心を惹いたと思われる。
また、CNETにも『サンは本当に復活するのか』、
某調査会社アナリストによる『サンはMSビジネスを見習うべき』など多々関連記事を目にすることができた。
思うに、世の中は『サービス中心』のビジネス・スタイルに変化していることが背景にあるからであろう。
例えば、飛行機で海外出張する際、ファースト・クラスとエコノミークラスの違いは、(1)スペース、(2)シート、(3)食事の内容、(4)映画や音楽サービス、
(5)新聞や雑誌、(6)ブランド、などがあげられる。
だが、目標地点に到着し、飛行機を降りてしまえば、
ホテルや相手先は当人が何のクラスに乗ってきたのか分からない訳だ。現在のような景気低迷にあっては、多少窮屈だがIT投資を縮小することが、CIOの高い
評価につながるのは確かであろう。
多くの顧客企業は、皆、エコノミークラスに乗りたがっている。これは本当なのだろうか。
かつての顧客トップは導入コンピュータまでブランドを求めていたはずだ。例えば、『うちのコンピュータはIBM製ですよ』なんて具合だったからだ。
確かに、EMS(海外製造委託専門企業)が躍進した結果、製造会社は自社でラインを組まなくとも、製品を手に入れることができる。品質も上昇傾向にあるだろう。『安かろう、悪かろう』が『安かろう、良かろう』に変わりつつある。
『現代は使い捨ての時代』であるという。
よって、数年経つ前に新しいものに買いかえる。
『どれだけ有効に使えたかが価値があり、
ものを大切にする時代ではない』。
もっともな論である。だが、行きすぎは反動を生むに違いない。
つまり、『Made in Japan』がVIPブランドに成長するかもしれない可能性を秘めていると考えている。
現在、米国中心とした資本主義の良い点と悪い点の両方が世界に蔓延しはじめているからだ。
日本古来の社会文化は、『モノを大切にする』ことにあった。つまり、『モノへ対価を支払う』文化だ。こう書くと、きっと時代に逆行していると指摘するアナリストも多いことだろう。
だが、モノ作りした人間は作り手の気持ちが理解できる。きっと、使い手がモノ作りに近づける日が必ずやってくると思われる。確かに『アプリケーション=サービス』であるが、それを支えている『基盤』、『プラットフォーム』はハードウェアである。
確かなハードウェアと効率良いソフトが同期してはじめて良いシステムができる。
始めにもどると、サンの方向転換は、P F.ドラッガーが指摘するように、有能な社外ソフトウェア経営者を2人向い入れ、『two in a box』戦略により、
二人の知恵だしによる経営舵取りした方が良いと考えている。この二人とは、ひとりはサービス重視型、もう一方はハードウェア技術重視型だ。
前者だけでは、これまで構築した既存顧客を失うことになる。舵取りは難しいが、成功した結果は予想以上に大きな影響力を持つことになると思われる。