最近、何人かの人から同じ質問を受けた。「有料購読する価値のあるアメリカのオンラインコンテンツ(雑誌・新聞)はどれか?」という質問である。
たぶん、EconomistとかFortuneとかBusiness WeekとかBusiness 2.0のサイトに行くと、読みたいなと思う記事が、有料購読者専用になっていると感じる場合が多いから、そんな質問が来たのだろう。最近、各誌とも、無償コンテンツの大盤振る舞いを改める傾向にあるからだ。
たぶんコンテンツ世界も、Google NewsやBlogのアグリゲーションのような無償コンテンツ世界(+超ニッチ有償コンテンツ市場群)と、大資本をバックにした雑誌・新聞などに二極分化しているのであろうが、今日は後者について最近感じることをまとめておこう。
最近面白くなったのがBusiness Week
最近、面白くなったなぁ、と思うのがBusiness Weekである。編集長でも変わったのかな。週刊で情報が豊富だから、ひとつ新聞・雑誌のコンテンツを選ぶとしたらBusiness Weekがお勧めである。
たとえば、10月13日号のカバーストーリーは、昨日の本欄でご紹介した「The Web Mogul」。InterActiveCorpのBarry Dillerの特集である。これは無償。
そしてアジア関係のカバーストーリーが「India's Tech King」。インドのソフトウェア・ITサービス企業・Wiproの特集。これも無償。
そしてヨーロッパのカバーストーリーが「Nokia's Big Leap」。これは雑誌発売と同時には購読者のみだったが、今は無償で読める。
あと、アメリカのスモールビジネスの隆盛について描いた「Right Place, Right Time」。これは最初から無償。
GEのイメルトの最近の戦略を追いかけた「Will Jeff Immelt's New Push Pay Off for GE?」と、イメルトのインタビュー「Immelt on Being an "Embedded Partner"」(オンラインのみ)。これも発売と同時には購読者のみで、今は無償。
そして、Sun Microsystemsが苦境をどういう戦略で乗り越えようとしているのかのサマリー「Can Sun Weather the Dark Days?」。これは最初から無償。
日本の燃料電池開発競争を描く「Japan: Fuel-Cell Nation」。これも最初から無償。
総じて、なかなか読みでのある充実した内容になっている。
ただ有償コンテンツといっても、発売と同時に全部読みたい人は別とすれば、少し時間を置くと、ほぼ全部無償で読めてしまう。
新聞の有償サイトはプロ向き
新聞はどうか。Wall Street Journal(WSJ)とFinancial Times(FT)以外は、ほぼすべて、その日のうちならば無償で読むことができる(ここが日本とは全く違う)。そんな中、WSJやFTを有償購読する価値があるだろうか。一部の市場関係者やプロを除く一般の人にとって、リアルタイム性の強い新聞記事は、ネット上に溢れる無償情報で事足りるだろう。
僕の独断で雑誌有償コンテンツランキングを作るとすれば、第1位はBusiness Week。第2位はFortune。第3位がBusiness 2.0。第4位がEconomist。第5位がHarvard Business Review。予算がかなりある人だって、この5つとWSJを購読すれば、まぁ、それで事足りるといえよう。
実はForbesも最近、Business Week同様、たいへん充実してきているのだが、僕のいまのところの理解では、無償で読める部分ばかりだ。
Forbesのサイトも充実している
たとえば10月13日号を眺めてみよう。
まずはハーバードビジネススクールの事業を描く「The Money Factory」。
「イノベーターのジレンマ」のChristensen教授の新刊書「Innovator’s Solution」の抜粋「Creating A Killer Product」。
Executive Coachingについて書かれた長文の解説記事「Cult of Personality」。
IBMがサプライチェーンマネジメントでいかに30億ドル削減したかについての「Back on the Chain Gang」。
少なくともこの4つは、かなり質の高い記事であるが、これらは全部無償(無料の読者登録は必要)である。
また、Wired MagazineやFast Companyも面白い記事が多いが、雑誌の刊行から少し時間がたつとネット上で全部無償で読めるようになる。少し待てば無償なら、まぁ待ってもいいのではないか。冒頭でご紹介したBusiness Weekも全部ではないが、待てばかなりの部分が無償になる。
以上、最近の有償コンテンツについて概観し、雑誌ランキングも作りながら考えてみたが、改めて、「有料購読する価値のあるアメリカのオンライン・コンテンツ(雑誌・新聞)はどれか?」という質問に戻って、ふと、こう思う。
お金を払ってまで読む必要のあるコンテンツなんてあるのか
でもなぁ・・・。有償コンテンツに価値ある素晴らしいものが多々あることは認めよう。ただ、これだけ無償コンテンツが毎日毎日溢れていく時代だと、すべてのものに目を通さなければ気がすまないマニアを除いて、有償コンテンツにたとえ価値があったって、カネを出してまで読む必要はあるんだろうか? たぶんないないだろうなぁ、と。
さて、Always Onを読んでいたら、「The Digital Newsstand」で、有償コンテンツについての議論を見つけた。
「So when you mix print and online business models together, you usually get a terrible mess.」
「Yet a magazine with no Website is an anachronism -- most print publishers do agree that an online presence is a cost of doing business.」
新味に乏しいのは、結局、有償コンテンツについての新しいビジネスモデルが完全に行き詰っているからである。
月4.95ドルで140誌のアーカイブが読めるサービス
そして最後に、
「No print publication is getting rich selling archival content, and readers don't really like being nickel-and-dimed to get access to an interesting three-year-old story.」
既存メディアは、アーカイブを皆、売ろうとしているが、カネを払ってまで3年前の記事にアクセスする人は少ない、と書き、
「That's where KeepMedia comes in. Louis Borders is betting that people will subscribe to his service (it's $4.95 a month) to get access to the archived files of nearly 140 magazines, like Forbes, Psychology Today, and Family Circle, as well as a few newspapers.
While I can't fault the utility of archived magazine articles, $59.40 a year is a lot for a consumer to pay to access back issues of a magazine he either already has on his shelf or doesn't find important enough to subscribe to. But something does make sense in this business. At the moment, 108 of the 140 KeepMedia titles are trade publications, like Profitable Embroiderer and Insurance Conference Planner (both Primedia publications).」
KeepMediaという新しいサービスを紹介している。月々4.95ドルで雑誌140誌のアーカイブファイルにアクセスできるという。ずいぶん安いなぁ。でも逆に、これは既存メディアが過去コンテンツでどれほど儲からないかの裏返しでもあるが、消費者としては使ってみようかなという気にもなる。1週間フリーのキャンペーンをやっているようなので、興味にある方はどうぞお試しください。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
kelsy on 2003/11/19
岡田と申します。大変参考になる記事をありがとうございます。
わたしは、有償コンテンツのビジネスモデルを模索している一人です。特に「紙」に重きを置く日本の文化もあるのでしょう、電子媒体の情報を購入するということが浸透するのはなかなか難しいことは実感しています。
他の方法、つまり同じ内容を紙に印刷してお送りする、セミナーなどで話すなどすると大変換金率が高いのですが、こと電子媒体だと無料であたりまえという感覚になるのは、消費者感覚によるものだと考えています。「インターネットはどんどん安くなっている」というトレンドにコンテンツの評価をする感覚が引っ張られているように思います。つまり、インターネットは「より安く」何かを入手する媒体だという感覚です。
しかし、リテラシーの向上による読み手の認識向上、情報提供側の淘汰、つまり業界の拡散と収束の繰り返しなどにより、やはり「量」よりも「質」を重視する傾向も必定です。それにどれだけ応えるかが有償コンテンツの鍵だと思います。ただ、情報過多により、インターネットに落胆したユーザがネットから離れていく傾向がエスカレートしなければ良いのですが。
okdt on 2003/11/05
梅田 さん
nekomaさん
>自分の読みたいコンテンツだけが満載のオンライン
マガジン
そういうサービスがもう米国にはあるみたいです。
http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20030822202.html
梅田さん。有償コンテンツのビジネスモデル構築競争
の様子を是非トレースしてリポートください。
sansara on 2003/10/18
最近、何人かの人から同じ質問を受けた。
という書き出しに引っかかるんですけど、
フィクションならフィクションにしないと
ノンフィクションとフィクションが混同されますよ。
あと、切り込み隊長のことは、
少し調べれば、わかること。
彼の会社のこと、資産のこと、投資家?って
どの程度のこと?
など。
もうすこしがんばって。
せっかくおもしろい、コラムなのに
与太を絡ませないで、ください。
中村武 on 2003/10/17
例えばですね、その週(or月)に発売される新聞や雑誌すべての記事タイトル一覧があって、
読みたいものをチェックしていくと、自分の読みたいコンテンツだけが満載のオンライン
マガジンが作れる──とかっていうのでしたら買ってもいいなあと思います。個別に雑誌
買うよりは安上がりだし、必要な記事は状況に応じてデジタルやアナログ保存できるし。
でも現状の有料サイトは雑誌と同じで、お金を払っても読みたい記事もあれば、お金を払っ
てまでは読みたくない記事もあるのです。一社だけだと偏るしね。だから微妙かな。
nekomo on 2003/10/17
平日はまずCNETにアクセスして梅田コラムを読むのが日課になってます。
なので月500円くらいなら出せるかな、と思います。
でも最初から月いくらの有償コンテンツだったら、
たとえ1週間無料体験みたいなサービスがあったとしても
そもそも読み始めることが無かったと思うので
その辺は難しいですね。
Sla on 2003/10/16
梅田さん いつも面白く読んでいます。無償で。
でも無償で読んでこれたおかげで、梅田さんの文章の
クオリティと私にとっての必要性(例:私は英語は駄
目なので、梅田コラムで自分でやった場合に比べ時間
の節約ができる)を理解しました。ですから、値段次
第ですが、梅田コラムを月額有償で買う気はあります。
私はまたジャパンナレッジを月1500円で
使っています。(できたら数百円にして欲しい)
http://www.japanknowledge.com/cgi-bin/onelook/OneLook.cgi
これは百科事典のweb版です。
もともとの意義とか、歴史的背景など、かっちりした
内容で重宝しています。調べる時間の節約になる、
またクオリティも保障されています。
確かに、newsは有償では買わない。
しかし、時間の節約とか、有償でも購入したいと思う
ような文章の質が確認できるなら、売れる分野は
ありそうです。
ためしに、このコメント欄で、梅田コラムを
月幾らなら買うか、皆さんから意見が欲しいな。
でもだからといって、有料化しちゃ駄目ですよ(笑)
sansara on 2003/10/16
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