DoCoMo2.0が分からない
DoCoMo2.0というコピーが登場してから、2ヶ月ほどが経過した。通年で行われる大型キャンペーンらしく、その流通量は衰えを知らないばかりか、夏季商戦の時期を迎えてさらに露出度は増えているようだ。
すでに大前研一氏をはじめあちこちで違和感が指摘されているこのキャンペーンだが、インパクトを与えることには一応成功しているとは思う。実際、このキャンペーン以前にDoCoMoが起用していたタレントの名前を、私は自力では思い出せなかった(答えは文末に)。その意味では、とりあえずAIDMAの最初のA(attention)の役割は果たしているのだろう。
ただ肝心の「このキャンペーンで消費者に何を伝えたいのか」が、相変わらずさっぱり分からない。分からないままでも日常生活には何ら支障はないのだが、一応この分野を領域に生業を営む身としては、分からないことは気になる。そして何が分からないのかを考えていくうちに、どうも彼らの現状認識や自己認識の諸々に、大きな誤りがあるのではないか、という気がしてきた。
2.0=プラットフォーム化
そもそも2.0って何だろう、というところを起点にしてしまうとあまりにややこしい話となるので、それはまた別のエントリで書くことにする(とはいえ実はもうタイトルも決めてある)。とりあえずここではWeb2.0の例を引いて仮説を考えてみることにする。
Web2.0について私は、ひとまず「Webのプラットフォーム化」だと考えている。WebおよびWebを支える情報通信技術が爆発的に普及し、裾野の広がりによって技術が成熟した結果、Webを情報流通の主要なプラットフォームとして認識してもやぶさかでない状況になった。だからこれからはWebそのものを云々するのではなく、Webを土台にその上で展開するサービスについて考えよう…これがWeb2.0という言葉に込められたメッセージの骨子だと思う。
このように「○○2.0」が「○○のプラットフォーム化」と考えられるなら、DoCoMo2.0とは「DoCoMoのプラットフォーム化」となる。すなわち、Webがそうなったように、DoCoMo(のサービス基盤)はすでに世の中にとってのプラットフォームであり、だからこれからはDoCoMoを土台にその上で展開するサービスについて考えよう…少なくとも「そう解釈してほしい」というのがコピーに込められた真意であるように思える。
プラットフォーム化の誤解
ではDoCoMoのプラットフォーム化とは何か。様々な考え方があろうけれど、Web2.0を基準にするのであれば、DoCoMoというプラットフォームの上で様々なプレイヤーが自由にビジネスを展開できる環境の実現、ということになろう。すなわち、DoCoMo自体が自身による直接的な収益機会を一義に考えるのではなく、その上で展開されるサービスの興隆による収益機会の間接化を目指す、ということである。
こう書くとDoCoMoは「iモードやiアプリによってすでに実現している」と胸を張るかもしれない。しかしそれに対し私は「それだけ?」と反論したい。彼らがアンバンドルしているのは最上位層たるアプリケーションのほんの一部の機能に過ぎない。現在総務省を中心に議論が進むMVNOも、基本的には渋々というスタンスである。
3Gへの設備投資や4Gへの準備で、彼らがアンバンドルに消極的になる理由は分からなくもない。またMVNOが世界的に必ずしも成功していないことは承知している。さらに言えば、垂直統合が悪だというのも単純かつ拙速な議論ではある。しかしそれでも、DoCoMo2.0を名乗るのであれば、少なくともMVNOぐらいは抵抗することなく実現してからにしてほしい。現状では、ネギトロ巻を頼んだのに入っているのはネギばかり、という気分である。
自らの価値の否定?
一方、そもそもDoCoMoは2.0を名乗るべきか、という問題もある。うがった見方なのは重々承知だが、どうも2.0を名乗ることで、彼ら自身の価値や資産を毀損しているのではないか、という気になってしまうのだ。
そもそもWeb2.0は事業リスクが大きい。ざっと思いつきを書き出しただけでも
・経営資源の一部を顧客という「管理しきれない存在」に委ねている
・ネットワーク効果が発揮されるまでのクリティカルマスが案外大きい
・ビジネスモデルが脆弱になりやすい(広告モデル依存)
など、一筋縄ではないのは明らかだ。それこそWikipediaの資金不足が典型的だが、ユーザを集められなかったSNSや、コンテンツの品質管理に失敗したニュースサイト等、あちこちに屍累々という状況である。Web2.0という概念自体は私も好きだし可能性も感じるのだが、開発すべき要件が多すぎて、自分で事業を興したり投資したり、というのには少し躊躇するのも事実だ。
一方、いわゆる1.0的なビジネスは、古くさいだの押しつけだのと揶揄されながら、しぶとく生き残っている。というよりは2007年現在、相変わらずビジネスのメインストリームである。それこそネットビジネスの世界でも、iTunesのように「どう考えても1.0的なビジネスモデル」がブレイクしている。また最近話題のjoostにしても、P2Pという一見アナーキーなアーキテクチャを採用しているだけで、基本的には放送モデルである。
そして他ならぬDoCoMo自身、できるだけ強固に垂直統合を進め、一番負荷のかかるコンテンツ開発のところだけ部分的に開放(しかしそれさえも基本はDoCoMoが制御しながら)、というほぼ典型的な1.0スタイルのビジネスで成功を収めてきた。だとしたら、さしあたり向こう1-2年で劇的な技術変化が起こる可能性も低い現在、それによって得られた価値や資産をもっと大切にすべきではないだろうか。
ターゲットとコピーのミスマッチ
最後に少し軽い(とはいえ目の前の競争では極めて重要な)指摘を。このDoCoMo2.0キャンペーンのプランニングには、マーケティング戦略(あるいはコミュニケーション戦略)上の不調和があるように思う。
一連のテレビCMを見る限り、今回のキャンペーンは若年層顧客の開拓と囲い込みを狙っているように思う。タレントのラインナップから察するに、おそらく10-20代前半くらいではないだろうか。この層は、そもそもインターネット利用にもPCではなく携帯電話を利用しがちだと言われる(実際、前回のエントリでも触れたように、両者は異なる集合を形成しつつある)。
一方、Web2.0を連想させる「○○2.0」というフレーズは、PCインターネットの世界でしか流通していないように思える。実際、Webサービス全般にまだPC利用を前提として設計されており、携帯電話での利用は困難だという面がある。そしてそれゆえに、Web2.0という概念自体、それなりのPCインターネット(のしかもヘビーユーザ)にしか用いられていない言葉のようにも感じる。
これは半分実感を含んでいるので要検証だが、おそらく今回のターゲットとPCインターネットユーザの集合は、重なる部分がそう大きくはない。すなわち結果として、DoCoMo2.0は「ターゲットに響かないコピー」になっているのではないか、と思えるのである。
以上、あれこれ憎まれ口を叩いてきたが、なにしろ私はここ10年以上ずっとDoCoMoユーザだったので、ぜひこうしたツッコミを一蹴するような新たなサービス展開を期待したいところである。
※今春までのCMキャラクターは「KAT-TUN」である。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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