最終更新時刻:2008年8月30日(土) 2時12分

4

リリースからの一年を振り返って

公開日時:
2007/08/31 11:28
著者:
kenn

Lingrをリリースしてからちょうど1年が経ったので、この機会に総括してみたいと思います。

お世話になってるユーザやAPI開発者の皆さんに恩返しをする意味でも、これから自身で何かを開発する際の参考にしてもらえればいいな、という思いから、なるべく具体的な数字を伝えることにしました。

これはデータセンターで計測されたデータ転送量のグラフです。

あとはGoogle Analytics(以下略GA)による統計で、簡単にご紹介できる現状の数字としては、

  • 月間ユニークユーザ:10万人
  • 月間ページビュー:23万PV
  • 絶対ユニークユーザ:26万人
  • 平均滞在時間:10分

といったところです。

なお、GAのデータに関しては、API経由のアクセスは一切カウントされないのと(あとで述べますが、API経由のアクセスはブラウザ経由の2倍あります)、AjaxやCometによるアクセスもページビューにはカウントされないという点に注意が必要です。

たとえば上のグラフ(転送量)で見ると2月のAPI公開直後、および3月末のJustin.tvがLingrを採用していた頃のトラフィックがスパイク状になっているのがわかりますが、これはAPI経由のトラフィックなのでGA上には数字としてほとんど現れていませんでした。

あとAlexaもありますが、中で取ってるデータと傾向が全然一致しないのであまり信用できない印象です。

それから、GAで取得したユーザの言語については70%日本語、20%英語、4%中国語、1%ドイツ語、あたりがメジャーどころとなっています。

ほかにもアラビア語(ar)、韓国語(kr)、オランダ語(nl)、スペイン語(es)、ポルトガル語(pt)、フランス語(fr)、イタリア語(it)、デンマーク語(da)、スウェーデン語(sv)、ノルウェー語(no)、ロシア語(ru)、トルコ語(tr)、タイ語(th)、チェコ語(cs)、ギリシア語(el)、ハンガリー語(hu)、クロアチア語(hr)、スロベニア語(sl)などからのアクセスが少ないながらも定常的にあり、これらほとんどの言語圏の人と実際に会話したことがあります(翻訳ボットをつかって)。特に最近はアラビア語&ペルシア語圏(イラン人・イエメン人)のコミュニティが活発です。

ブラウザのシェアは

  • IE6:45%
  • Firefox:34%
  • IE7:11%
  • Safari:6%
  • Opera:3%

と混戦模様。

アプリケーションレベルのデータとしては

  • 登録ユーザ数:8600人
  • 総ルーム数:5000ルーム(うち3400が非公開and/orパスワード)
  • 同時接続ユーザ数:600人(Browser 200 + API 400)
  • 総イベント数:14,000,000件(発言+入退室)
  • 総発言数:4,800,000件
  • 一日あたりの発言数:25,000-30,000件(うち10,000件が非公開部屋、10,000件がパスワード部屋での発言)
  • 一日あたりのPM発言数:2,000件(部屋のログに残らない1:1のダイレクトメッセージ)

という実績が主たる数字になっています。

登録ユーザ数をどう見るかについては、Lingrの場合にはユーザ登録しなくても使えるので、一般的なサイトとの比較が難しいところではありますが、おおむね経験からいうと登録ユーザ数の3-4倍ぐらいが非登録のまま使ってるのではないかと思われます。この推測を信じるなら、だいたい一般サイトでいうところの3万人ぐらいがサインナップしている状況に近いのではないかというところです。

また、全発言のうち70%ほどが非公開の部屋で行われているところも、当初予想したよりもかなり多い割合です。

さて、以上の数字から、あっさり結論を述べると、

  • どの数字も遅いながらも日々着々と伸びてはいる
  • しかし現在の絶対数そのものは非常に少ない

ということが言えると思います。

さて。

現在はまだウェブを同時的(リアルタイム)に使うというパラダイムにはなっていないが、確実にそちらに向かうので、これらの数字の立ち上がりは遅いが着実に伸びるだろう、というのが当初からの予想でした。

たとえば、今から10年後を想像してみてください。さまざまな流行が生まれては消えるこの世界で、10年後も確実に残っているといえる本質的な分野はそうそうありません。ウェブの世界で、検索はずっとキラーアプリケーションでしょう。ブログやウィキなどのCMSもずっとキラーであり続けるでしょう。チャットもまた、何らかのかたちで10年後も確実に需要が広がっているだろうといえる、数少ない分野のひとつだと考えました。

あらゆるアプリがウェブ化していく昨今にあって、まだまだSkypeだのLimeChatだのMSNメッセだのクライアントアプリが全盛で、明確な勝者がおらず「小さな市場に群がる多数のプレイヤー」状態のウェブ・チャットも、市場が全体として小さくなることはないと考えています。

ひとつこだわりがあるのは、いま市場が小さいということは、グーグルやヤフーのようなシリアスな競合がやってこないという意味で、矛盾するようですがとても重要な意義を持っている、という考え方です。大手は需要が証明済みのマーケットに後から参入してくるので、それよりも後に参入したのでは絶対に勝てません。挑戦者にとっては、存在しない市場を自ら創造して証明者になることが唯一にして最大の正攻法だと思います。

成功しているアプリを見てインスパイアされ、すでに存在する市場で模倣品や改良品を作るのは精神的には楽だし、技術を鍛える良いトレーニングにはなりますが、それと「いまは存在しない新しいモデルを作る」という決断の間には超えられない壁があるように感じます。

たとえば、Cometという技術について、ブログで解説してみたり実験的に実装してみました、という人はかなりの数いると思うのですが、実際に腹をくくってCometをプロダクションレベルで使うアプリを作った人というのは、あれから一年経ってみてもほとんどいないみたいで、ちょっぴり残念です。(しかし、公平のために、あれから登場したいくつかの実装はとても面白いものだったし、勉強になった、とも言っておきたいと思います。)

時代はまだまだブログだのウィキだの非同期メッセージング全盛。ようやくTwitterのような半リアルタイムのアプリケーションがようやく先進的ユーザの間でブレイクしているという時代ですから、純リアルタイムで複数人がコラボするようなアプリケーションの時代は徐々に近づきつつあるとはいえ、まだまだ遠いと感じます。

結局のところ、ビジネスはタイミングが全て。モノの善し悪しはともかく、残念ながらLingrは時代にドンピシャではまるタイミングで登場したとは言えない、というのが現時点でのぼくなりの総括です。

果たして、このまま伸びればLingrがクリティカル・マスを迎える時代は来るのか?くるとして、いつ?

時代のモメンタムというものは、小さなベンチャーごときが「おれたちが動かして見せる」と威勢のいいことを言うには手に余るものです。

一方で、プロダクトというのは手を加え続けるとどんどん複雑怪奇になっていき、使いにくくなっていくものです。Lingrにとって、シンプルさと使いやすさは最強の武器ですから、そのメリットを減じるような新機能追加をどんどんやることは、「真に進むべき方向が見えてくる成長期」をまだ迎えていない現段階では自殺行為です。

かといって、時代が追いついてくるのをただ寝て待っているわけにはいきません。技術者のエネルギーをくすぶらせておくわけにもいきません。

では、どうするか?

長らく悩んでいたこの問いに、やっと答えが出ました。

「Lingrの反省を活かし、もっと時代に即した新しいアプリケーションをつくる」

これです。Lingrと同じビジョンを共有しつつも、もっと早期に立ち上がるアプリケーションをスクラッチから作る、という方向性がこの夏、ようやく出てきました。もう道筋は見えていて走り出しているので、内容については書ける時期がきたら書きたいと思います。

長くなってきたので、今回はここまで。次回はもっと掘り下げて「Lingrから学んだ反省点のまとめ」みたいなのを書く、かも。

p.s.
あと、9月7日に東京でITpro Challenge!というイベントで講演やります。募集はすぐに締め切られましたが、プレゼン資料は後日入手できるので、なるべく具体的に書いておくようにしたいと思います。ぼく以外の講演が全部面白そうなので、一人の観客としてすごく楽しみです。

♪ Kelly Clarkson / Behind These Hazel Eyes

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

6

営業努力についてのコメントは残念極まりありません。

チャットに疑問を感じつつも、Lingr は、もしかしたら良いかもしれない、行くところまで行くかもしれないと密かに期待していました。
だからこそ、大々的に宣伝してほしいと思っていたわけです。

それなのに、今回のコメントは、営業するに足りない糞でした。と言っているようなものですよね?
残念です。

  ぽんてぃ on 2007/09/15

5

> ぽんてぃさん

現実の経営にはリソースの制約から選択と集中がつきものです。やれればいいなぁと思うことが100ある中から、実際にやれる10を選んでやるわけです。ご指摘いただいたような点は、当然考慮していますが、その10に入らなかった、ということですね。

なかでも、営業努力を増やせば何とかなる、というような考えには全く同意できません。天に向かってつばを吐けば、自分にかえってきます。それを、もっと強く吐かないからだ、と根性論に持って行くのは間違った戦略だと思います。この世界には目に見えにくい物理法則のようなものがあって、大事なのはそれに抗うことではなくて、それを見抜いて生かせるかどうかだと思います。

> 跳箱管理人さん

まぁ、言い訳ととれるかも知れません。でも、今言える精一杯のことを包み隠さず正直に伝えたつもりです。

> Chikara Miyakeさん

まず、「日系企業をバックに日本人が率いて開発した」という色は極力出さないようにしています。あくまでシリコンバレーのスタートアップのひとつ、という見え方を意識しています。というのも、日本バックをちらつかせることはデメリットにしかならないからです。

で、ご指摘の閉鎖性の問題ですが、米国にもごく一部の上流社会にはありますが、日本みたいなことはない、と言えると思います。かなり純粋かつフェアにモノが評価されると言ってよいと思います。ただし、英語のセンスはかなり文化的に踏み込んだレベルの高水準が要求される、という一点は言えると思います。

このあたりの話は一エントリぶつ価値があるかとも思っていますが。。。

  kenn on 2007/09/12

4

あ、ただ、一点、気になった(興味のある)ことがあります。
日系企業をバックに日本人が率いて開発したWebアプリケーションは、米国ではどのように迎えられるのでしょうか?
(馬鹿な質問かもしれません)

閉鎖性という意味では、米国と日本とを比べるにはあまりにも違いすぎるかも知れませんが、例えば、我が国では、韓国、中国系のサービス(オーマイニュース、百度)だけでなく、王者Googleでさえ、ほぼ日本化したYahooを相手に、検索のシェアの面では苦戦しています。

今のところ、日本発(もしくは日本企業発、日本人発)で、米国でブレークしたWebサービスを知りません。実際のところ、先に述べた閉鎖性は、米国にもあるものなのでしょうか?もしあると感じるなら、マーケティングの面で、なにかしら戦略を考えていますでしょうか?
(でも、そんなこと、ここでは書けないですよね・・・)

  Chikara Miyake on 2007/09/09

3

私も、

> 現在はまだウェブを同時的(リアルタイム)に使うというパラダイムにはなっていないが、確実にそちらに向かうので

だと思います。

リアルタイムでコミュニケートできるWebベースのサービスが、非リアルタイムのサービスのシェアを超えるとは考えられませんが、そんなに遠くない将来、前者が我々の実生活に大きく食い込んでくることは間違いないでしょう。

「早すぎた」といえば買いかぶりかもしれませんが、ここはひとつ、「まともに使えて、UIもヒップなプロトタイプを作ってやった」くらいに考えて、次のプロダクトに繋いでいって下さい。

  Chikara Miyake on 2007/09/08

2

まあ、なんにせよ言い訳ご苦労。

  跳箱管理人 on 2007/09/07

1

チャット自体にあまり魅力を感じません。
そう思っている人は多いと思いますが、そのあたりの調査結果はどうなんでしょう?

チャットに未来があると信じているのなら、営業努力が絶対的に足りないと思います。

また、一般市民に広く普及することを目指しているのなら、日本語版も必要ではないでしょうか?
マニア向けのマニアックなものを目指しているのか、大衆受けするものを目指しているのか、どっちなんでしょう?

  ぽんてぃ on 2007/09/06

ブログにコメントするにはCNET_IDにログインしてください。

この記事に対するTrackBackのURL: 

このブログについて

ブロガープロフィール

アーカイブ

カテゴリ

ブログネットワーク

アルファブロガー

佐々木俊尚 ジャーナリストの視点グーグルはストビューで「よそ者」化する
佐々木俊尚 ジャーナリストの視点
クロサカタツヤの情報通信インサイト北京オリンピック
クロサカタツヤの情報通信インサイト
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance新サービスをローンチしました
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
村上敬亮 情報産業の未来図コンテンツ市場14兆円の中身と行方
村上敬亮 情報産業の未来図
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」場所・空間を増幅!?「ロケーション・アンプ」
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」
鈴木健の天命反転生活日記パラレルワールドとしての電脳コイル
鈴木健の天命反転生活日記

読者ブロガー

インターネットの裏側を探しましょtaspoの必要性とタバコ屋でのコミュニケーション
インターネットの裏側を探しましょ
木田わをんのパソコン武士道@Tovas for AppExchangeのセットアップを30分で完了
木田わをんのパソコン武士道

企画特集

DELLが掲げる「新・仮想化アセスメントサービス」DELLが掲げる「新・仮想化アセスメントサービス」
〜企業システムの仮想化環境の構築を支援〜
仮想化環境で求められるストレージの要件仮想化環境で求められるストレージの要件
それに応えるNetAppの実力とは?

新着コメント

タバコにはカドミウムや鉛,ベンゼン,アセトンが含まれます 乾電池や殺虫剤......
taspoの必要性とタバコ屋でのコミュニケーション
投稿者:fzs600.zzr1400
たばこによる経済効果よりも関連の損失額の方が何倍も大きいという試算があり......
taspoの必要性とタバコ屋でのコミュニケーション
投稿者:PowerYOGA
こういうのいいですね!ちなみにCNETブログのシステムは全然進化しないですね......
夢幻∞大のエントリーアクセスランキング(8/29編)
投稿者:尊仁
櫻吉さん、いつもお世話になっています。アクセス順に並んでくれるとありがた......
夢幻∞大のエントリーアクセスランキング(8/29編)
投稿者:mugendai
「アダムとイブが楽園を追放されたのは、神様の言いつけを破って禁断の実を食......
毎日新聞社内で何が起きているのか(下)
投稿者:keijizyou

ブログネットワークとは?

CNET Japan ブログネットワークは、元はCNET Japanの一読者であった読者ブロガーと、編集部の依頼により執筆されているアルファブロガーたちが、ブログを通じてオンタイムに批評や意見を発信する場である「オピニオンプレイス」、また、オピニオンを交換するブロガーたちが集うソサエティです。

広い視野と鋭い目を持ったブロガーたちが、今日のIT業界や製品に対するビジョンや見解について日々熱く語っています。

あなたもブログを書いてみませんか?

CNET Japanやその他サイトが提供するITニュースやコンテンツへの意見や分析、 ビジネスやテクノロジーに対するビジョンや見解について語っていただける方を 募集しています。ご応募はこちらから

ブログの投稿・管理

ブログの投稿はこちらから(※ブロガー専用)

ブログアワード2007開催決定!

今年最も活躍したブロガーを表彰します。詳細はこちらから

αマークって?

これは、CNET Japan 編集部の依頼に基づいて執筆されているCNET Japan アルファブロガーによるブログの印です。

Good!って?

CNET Japan ブログネットワーク内で拍手の代わりに使用する機能です。ブログを読んで、感激した・役に立ったなど、うれしいと思ったときにクリックしてください。多くGood!を獲得した記事は、より多くの人に読まれるように表示されます。

レビュー

[レビュー]高い信頼性を普通に使う地球に優しい電源ユニット--Antec EarthWattsシリーズ EA-650
“自作ユーザーは、電源ユニットに何を求めるのか?”出力なのか、安定性なのか、それとも機能性なのか?難し
今週の新製品総チェック:ノート、デスクトップ、UMPCまでPC秋モデルが続々
富士通、NEC、東芝などのPCメーカーから続々と新製品が登場した。ノートPC、デスクトップPCに加え、注目の
今週の新製品総チェック:薄さ13.9mmのサイバーショット登場!NEC「LaVie」はデザインモデルが
最薄部13.9mmのソニー「サイバーショット」、ニコンのGPS内蔵デジカメ「COOLPIX」など、機能性、デザイン性